2016 Fiscal Year Research-status Report
21世紀ドイツ社会国家の歴史的位相―戦後連邦共和国における歴史的経緯を踏まえて
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15K03575
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
福澤 直樹 名古屋大学, 経済学研究科, 教授 (10242801)
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Project Period (FY) |
2015-10-21 – 2019-03-31
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Keywords | 社会国家 / オルド自由主義 / 社会的市場経済 / フライブルク学派 / ドイツ経済史 / 戦後西ドイツ / 福祉国家 / 社会政策史 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は前年度内に調達できなかった研究文献や一次資料を収集した。それらをもとに、前年度に引き続き、ドイツ現地の社会国家体制に関わる最新の研究動向を捕捉し、社会経済的「格差」をめぐるより新しい議論を追った。現代資本主義を論じる様々な論考や社会国家(ないし福祉国家)の国際比較研究においても引き続き最新のものを渉猟した。 それらを踏まえて、戦後間もない頃、1950年代、60年代の西ドイツ「社会国家」の体制の背景としての同時期の経済情勢や、根底にある経済基盤との関係を分析するとともにドイツ現地においてさらに必要となった資料の収集を行い、またさらに新しい研究や、関連分野の諸研究を一通り検討し、必要なものはそのまま収集した。 渡航時においては、本研究が取り扱うフライブルク学派に関わる資料や情報を得るべくフライブルク大学も訪れ、フライブルク大学の教員とともに How Tradition of Economic Thinking Shape Economic Policy というテーマで研究ユニットを立ち上げ、今後の共同研究の基盤も構築した。(このユニットのテーマ自体が本研究の目的に合致させたものであり、また自身はとりわけ The "Social Market Economy" and the German "Sozialstaat" に関する分析を深めていくことになった。) これと並行して、バックグラウンドとしての福祉国家、福祉社会研究全般の理解を深めるべく、政治経済学・経済史学会 福祉社会研究フォーラムをはじめとする研究集会にも積極的に出席しながら、比較の視点が高められるよう、各国の福祉国家、福祉社会研究者と研究協力体制を築き、共同報告なども行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の想定では、本研究初年度において研究の基盤となる文献や資料、その他各種の一次資料を用いて早い段階から仮説となる理論モデルを構築し、年度内に戦後間もない時期から1950年代にかけての西ドイツの社会国家的諸施策を施行していくうえでの実態、背景となる経済状況や構造、経済秩序とのかかわりを明確にするような実証マテリアルを渉猟していくよう意図していたが、本研究課題の初年度は10月下旬の補助金受入れとなり、実質的な研究の開始は11月となった。そのため研究文献や資料等の調達が後にずれ、実際には初年度末から平成28年度にかけて行うこととなった。関連して、初年度度に実施する計画であったドイツでの資料調査・収集も平成28年度になってから実施した。 こうした遅れに対し、本来ならば本研究に対するエフォートを高めて遅れを取り戻したいところであったが、平成28年度は副研究科長職兼務およびそれに伴う各種委員長業務、加えて総長補佐兼任による諸業務により、大学の管理的業務を多重に処理することを余儀なくされ、十分なエフォートの向上に至ることができず、本来の計画からの遅れがそのまま研究計画の進行の後ずれとして残ったかたちになっている。
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Strategy for Future Research Activity |
【現在までの進捗状況】欄で記した理由により、本研究課題の進行は「やや遅れている」状況にあるが、平成28年度中にフライブルク大学教員と共に立ち上げた、本研究がとくに問題とする旧西ドイツのフライブルク学派、オルドリベラリズムと現実政策との相関関係に関する研究ユニットを基盤に研究協力を図りつつ、積極的に研究を進捗させる意向である。 平成29年度よりまた、まだなお分析が十分でない1960年代以降の西ドイツおよび統一後のドイツ連邦共和国における社会国家的政策の具体的な実施状況と経済基盤的背景、そのつどの経済思想それぞれの因果関係について、引き続き分析を進めていく。さらなる資料収集や文献調査、また研究集会や意見交換のために、再度ドイツに渡航し、現地での(短期の)研究活動を展開する(その際、外国旅費、資料調査や複写等の費用において補助金を有効に活用していく)。 大学の管理的業務を多重に抱える状況は今後もしばらく継続するが、限られたエフォートの中でなお意欲的に資料を分析し、またフライブルク大学との研究ユニットの中での相互の意見交換などから得られる知見等も有効に活用しつつ、平成29~30年度にかけてはその成果を内外で公刊し、また国内学会における討論や成果の発表も積極的に行っていく。
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Causes of Carryover |
本研究課題では初年度に10月下旬の補助金受入れとなり、実質的な研究の開始は11月ととなった。そのため研究文献や資料等の調達が後ずれし、年度末から平成28年度にかけてなされることになった。それと関連して、本来の計画では初年度に実施する予定としていたドイツでの資料調査・収集に対する十分な準備を行うことができず、年度内の渡航を見送り、翌年度の平成28年度に実施した。当年度においては相応の支出をする程度まで研究は進捗したが、大学の管理的業務を多重に抱える状況により十分なエフォートの増加がかなわず、予算の執行が順次後ずれするかたちとなり、比較的多額の未使用金額を数えるに至ったものである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度中にフライブルク大学教員と共に立ち上げた、本研究がとくに問題とする旧西ドイツのフライブルク学派、オルドリベラリズムと現実政策との相関関係に関する研究ユニットを基盤に国外研究者らと共に研究協力を図りつつ、今後一層積極的に研究を進捗させる意向である。研究集会や意見交換のために、さらには戦後西ドイツの経済状況や経済基盤とオルドリベラリズムをはじめとする各種経済思想、現実の社会政策との相互関係を明確にするべく引き続き一次資料を収集する。そのために外国旅費、資料調査や複写等の費用において補助金を有効に活用していく計画である。また、資料収集が進むにつれ、今後さらに人件費・謝金も必要となる。
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Research Products
(1 results)