2015 Fiscal Year Research-status Report
不足のなかの「消費社会」:ソビエトにおける消費財市場の発展
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15K03577
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
藤原 克美 大阪大学, 言語文化研究科(研究院), 教授 (50304069)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ソビエト / 消費 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、衣料、家電、乗用車、別荘の代表的な財について、その獲得経路を需要サイドと供給サイドの資料を用いて検討し、ソビエトにおける消費社会の広がりと階層化、および消費者の意識を明らかにするものである。 平成27年度は、数ヶ月の在外研究期間がとれたこともあり、当初の予定を変更して、衣料のみに限定せず、家電や乗用車についても、時間のある限り文書館資料を収集することに努めた。 衣料の獲得経路については、これまでは生産企業の研究を続けてきたが、モスクワ市中央国立文書館で閲覧した、モスクワのツム(中央百貨店)およびグム(国営百貨店)フォンドからは、百貨店が販売実績を分析し、顧客のクレームや要望を生産企業に伝達する役割を担っていたことや、滞貨をなくすべく販促キャンペーンを実施していた事実を知ることができた。また、ソビエト製の商品に留まらず、(コメコン諸国および途上国を中心とする)海外からの輸入品に対しても、様々な不満や問題点が存在していたことがわかった。家電については、百貨店でもテレビの販促キャンペーンを展開しており、不足と滞貨が混在する状況は衣料と変わらないことが明らかとなった。雑誌「新商品」では、様々なアイデア商品が紹介されており、実際にはほとんど国民が知ることのなかった「幻の商品」の存在を多数確認できた。乗用車の獲得経路については、ロシア国立経済文書館の連邦商業省フォンドで、各共和国、企業、共産党や科学アカデミーなどの組織に、乗用車を追加配分する決定文書を目にした。ロシア人への聞き取りでも、乗用車だけは労働組合(企業)を通じて配分されたとの証言があり、一般的な商品とは異なる流通システムであったことが確認された。 また、平成28年度にアンケートの実施を予定しているため、アンケート項目を絞る目的で、数名のロシア人へ予備的なインタヴューを行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成27年度は、衣料と家電の調達経路について研究を進め、資料収集は予定通り進展した。ただし、今後、論文を執筆する過程で調査の不十分な箇所が明らかになる可能性は否定できない。 また、平成28年度のアンケート調査に向けて、本来ならば協力相手の選定に着手すべきであったが、十分行うことができなかった。 以上から、研究はおおむね計画通りに進んだが、一部で若干の遅れが生じていると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
申請書の記載に沿って、以下のように研究を進める。 まず、平成28年度も、衣料と家電に関する研究を継続する。衣料・家電の獲得方法、百貨店の役割等に関するアンケート調査を実施する。ファッションの「見せびらかし」はどの程度許容されたのか、購買活動(ショッピング)は快楽をもたらしたのか、といった課題も調査内容に含める。9月には文書館で資料を収集し、10月以降は、収集した資料とアンケート結果をもとに、衣料と家電の論文執筆にとりかかる。 また、乗用車について予備的調査を開始する。乗用車の配分方法や消費者に提示された選択肢について、仮説を立てる。
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Research Products
(2 results)