2018 Fiscal Year Research-status Report
流動的メンバーシップを通じたイノベーション創出メカニズム
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15K03596
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
阿部 智和 北海道大学, 経済学研究院, 准教授 (20452857)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 経営組織論 / コワーキング / 経営戦略論 / イノベーション / ワークプレイス・デザイン / 共有・共創空間 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度には,以下の3つの作業を進めた. 第1に,過去の調査で得られたデータをもとに,コワーキングスペースの運営にとって重要と考えられている2つの目標(コミュニティ形成とスペース事業のサステナビリティ)に影響を与える要因についての考察を進めた.具体的には,これら2つの目標を従属変数とした回帰分析を行い,コミュニティ形成とスペース事業のサステナビリティに寄与する変数を,コミュニティ志向(コミュニティ形成にのみ寄与する),サステナビリティ志向(事業のサステナビリティ向上にのみ寄与する),トレードオフ(上記いずれかに正の貢献する一方で,もう一方には負の貢献をする),両立志向(コミュニティ形成にもサステナビリティ向上にも寄与する)の4類型に分類可能であることを明らかにした.これらの内容を2018年7月に国際学会(European Group for Organizational Studies)で報告した. 第2に,上記の内容を2018年4月に日本語で論文形式にまとめ,ワーキング・ペーパーとして公開した.その後,同ワーキング・ペーパーをもとに,国際学会で得られたコメントを踏まえ,内容を修正し,英語に翻訳した改訂版を2018年9月にワーキング・ペーパーとして公開した. 第3に,上記の改訂版ワーキング・ペーパーの一部のトピックに焦点を当て,国際ジャーナルに論文を投稿した(2019年3月末). ただ,当初の想定よりも投稿時期が遅れたことにより,年度当初の目的に完全には到達しなかった.そのため,本研究課題について期間の延長申請を行った.2019年度は,まず,上記の投稿論文が国際ジャーナルに受理されることを目指すこととしたい.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2017年度後半から継続して,コワーキングスペースの運営にとって重要な変数の特定作業を主として進めた.コワーキングスペースに関する先行研究では,コワーキングスペースの目的(共有や協働)を達成しつつ,スペースという場を維持する財務的成果(売上や利益)に寄与する要因について,少数の事例ベースからの知見,もしくは,理念的想定が提示されている状況に留まっており,大量データに基づき定量的な実証研究を行った意義は研究面および実践面にとって大きいと考えている.また,これらの分析結果を,国際学会(European Group for Organizational Studies)で報告した.これらについては,年度当初の計画の通り,達成することができた. ただ,研究実績の概要で言及の通り,国際ジャーナルへの投稿は,当初目標である2018年度前半よりも大幅に遅れた.学会で得たコメントの反映,ターゲットとしたジャーナルのカバー領域に合わせた改訂などに当初の想定よりも時間がかかったことがその理由である. また,保有しているデータを用いた,新たな分析作業は国際学会にエントリーした段階に留まっており,論文として投稿する段階には至っていない(ただし,発表については2019年3月にアクセプト済み).これらを含めると,2018年度終了時点での,進捗状況は「やや遅れている」状況にあると思われる.
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度は,以下の3つの作業を進めていく. 第1に,2019年7月にEuropean Group for Organizational Studiesにて研究発表を行う(すでにアクセプト済み).この作業を通じ,内容の精緻化を図り,国際ジャーナルに論文を投稿する. 第2に,2019年3月に投稿した論文が,何らかの国際ジャーナルに受理されるように,査読対応(もしくは,リジェクトされた際には別のジャーナルへの投稿)などの作業を進めていく. 第3に,新たに採択された基盤研究Cの研究課題との相乗効果を追求するためにも,複数のスペースを訪問し,インタビュー調査を進める予定である.具体的には,ここまで進めてきた定量分析で得られた知見について,その因果経路をより明らかにするために,複数の運営者を対象としてインタビュー調査を実施する.また,利用者に対する調査(利用者によるイノベーション創出過程の解明)を行い,利用実態(スペース内での組織行動)や利用者による成果の具体像をインタビューによって明らかにする.
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Causes of Carryover |
研究が当初の想定通りに進展しなかったこと,ならびに,2019年7月にスコットランドで開催予定のEuropean Group for Organizational Studiesでの報告が決定したため,フル・ペーパーの英文校閲および渡航費に充当することを予定し,2018年度内の予算を繰り越すこととした.さらに2019年度内に国際ジャーナルに投稿する予定のため,その英文校閲に充当する予定である.
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