2015 Fiscal Year Research-status Report
産業地域における競争の文脈の形成・変容過程に関する理論的・経験的研究
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15K03597
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| Research Institution | Hokkaido University |
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Principal Investigator |
相原 基大 北海道大学, 経済学研究科(研究院), 准教授 (40336144)
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| Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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| Keywords | 産業地域 / 競争の文脈 / メカニズムアプローチ |
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| Outline of Annual Research Achievements |
研究初年度である本年度は，(1)産業地域における競争の文脈の形成・変容過程を理解する概念枠の構築をすすめるとともに，(2)次年度以降に本格的に展開する事例研究に向けて統計記録および史料の収集に努め，分析用のデータセットの構築に着手した．
(1)の概念枠の構築に関しては主に２つの活動を展開した．第１に，メカニズム・アプローチの立場から，産業地域を特徴づけるカテゴリの振る舞いに注目するアプローチを採用し，産業地域における競争の文脈の形成・変容過程を理解する概念枠の構築に努めた．具体的には，近年組織研究分野で急速に発展しているカテゴリ研究の成果を整理し，産業地域研究への適用に向けた検討を行うとともに，本年度に分析用データが揃った国内のIT集積地を対象にした詳細な事例研究を実施し，概念枠を試論的に構築した．第２に，代表者の既存の成果を改定し，産業地域内外で流れる業界の史的な文脈を数量的に把握する手法と論理的基盤を洗練させた．同成果に関して，現時点での研究成果をペーパーにまとめ、公開が決定している．
(2)のデータセットの構築に関しては，国内外の木工インテリア産地，眼鏡枠産地，ICT集積地に関する統計記録および史料を収集し，分析用データを揃えている．国外の調査対象に関しては，当地を対象にした研究を実施している欧州の研究者から，入手困難な統計記録や資料の共有と業界とのコネクションの紹介を得，データの蓄積を進めている．他方，国内の調査対象に関しては，入手困難な史料を現地で収集し，データセットの充実に努めた．とくに，国内のICT集積地の一例に関しては，先述の通り，関係者へのヒアリング調査を含む詳細な事例研究を遂行し，競争の文脈の形成・変容におけるカテゴリの振る舞いの役割について記述的に解明した．現在，同研究成果をとりまとめており，近くディスカッションペーパーとして公開の予定である．
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| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上述のように，研究の遂行状況はおおむね順調である．すなわち，当初の研究計画にあった，概念枠の構築に向けたレビューの実施，事例研究に向けた基礎的な資料収集と社会的ネットワークの構築，探索的な記述的研究の着手などは予定通りに展開できている．一部の成果に関しては，当初計画よりも早期にパブリッシュできる状況になっている．ただし，以下の２点に関して計画時に想定していなかった事態が生じており，計画に若干の修正が必要になっている．第１に，欧州にて産業地域研究を実施しているカターニャ大学（イタリア）の研究者を，代表者がホストを務める短期研究員として受け入れる好機に恵まれたため，同国の木工インテリア産地および眼鏡枠産地に関する調査協力の社会的ネットワークの構築と史料収集が容易になった．当初は，欧州出張によりこれらの目的を達成する予定であった．同氏から現地で入手可能な史料の情報や人脈の紹介を含めた協力を得られた結果，実地調査に先立ちより入念な準備ができる状況になった．第２に，第１の点とも関係するが，入手可能な史料が当初計画よりも大幅に増大した結果，各種史料の整理に負荷がかかることになった．結果，分析用データセットの構築作業自体は当初見込みよりも若干遅れている．豊富な文献史料を見出せた結果，データを揃えながら漸進的に概念枠の精度を上げていく必要性も明らかになっている．
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| Strategy for Future Research Activity |
２年度目についても，当初計画に沿って確実に研究を展開していく．具体的には次の４つの推進方策を立てている．第１に，先行研究のレビューの成果および着手済みの事例研究の結果にもとづき，本研究プロジェクトを支える分析の概念枠を定める．第２に，研究室に蓄積している統計記録および文献史料を整理し，分析に適うフォーマットにデータを揃え，比較事例研究に耐える包括的なデータベースを構築する．第３に，本格的な実地調査に先立ち，入手済みの国内外の産業地域に関する二次データをベースに記述的な研究を実施し，それらの成果を早期にディスカッションペーパーにまとめ公開する．第４に，公開したディスカッションペーパーをたたき台に実地調査を推進し，研究内容の改訂に努める．それらの成果を学術論文をまとめ，できる限りタイミングよくカンファレンスでの報告および学術雑誌に投稿する．
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| Causes of Carryover |
当初の計画では国内外での実地調査を計画していたが，調査先の都合により年度内の実現が難しくなったケースがあっただけでなく，上述の通り，イタリアにおいて産業地域研究に従事する研究者を短期研究員として受け入れたことにより，同時期に予定していた研究初年度における実地調査（基礎的な史料の収集と社会的ネットワークの構築）の緊急性が一部減じたため，部分的に調査出張を来年度以降に繰り越した．また，計画した以上の分量の二次データ，とくに文献史料を入手できた結果，データを揃える努力を優先し，原データを分析に適うデータセットに変換する作業には着手しきれなかった．そのために，企業訪問などに使用する旅費や人件費・謝金などに関して，次年度使用額が生じたものと考えられる．
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| Expenditure Plan for Carryover Budget |
2016年度には，繰り越しとなっていた調査対象先へ実地調査を実施するとともに，研究室に揃ったデータを適宜，分析に適うフォーマットに変換して，包括的なデータベースを構築する業務を本格的に推進する予定である．
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