2018 Fiscal Year Annual Research Report
Emergence and transformation of competitive contexts in industrial districts
Project/Area Number |
15K03597
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
相原 基大 北海道大学, 経済学研究院, 准教授 (40336144)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 産業地域 / 競争の文脈 / メカニズムアプローチ |
Outline of Annual Research Achievements |
過年度の調査研究活動で得たデータの整備と更新を進めつつ,詳細な事例研究を遂行し成果をとりまとめている.主な成果は次の通り.第1に,ベッルーノを中心に形作られてきた眼鏡枠製造業の産業地域における1961年から2017年までの半世紀以上にわたる競争の文脈に関する事例研究から重要な区切りとなる成果を得,ペーパーの執筆を進めた.産業地域における競争の文脈が形成・変容するひとつのパターンを記述するとともに,同パターンの背後で作動していたと考えられる複数のメカニズムおよびトリガー群等に関して仮説的な知見を導いている.第2は,同じ眼鏡枠製造分野の国際的な産業地域である鯖江地域で形成されてきた競争の文脈に関する事例研究を進め,ベッルーノにおける競争の文脈の形成・発展過程と対比するなかで,産業地域で生起する現象を捉える新たな概念的視角を得ている.産業地域の挙動を産業地域の内的な構造特性に帰して理解する視角,産業地域間の経済的パフォーマンスの差を比較静学的に分析する視角等に代わり,「産業地域」が外に開かれたオーガニックな性質を備えた存在であるとともに,業界内外で育まれる認知的な構成物としての側面を有している点に注目する視角である.第3は,完備性の高いデータベースの構築と地域間比較に適したデータセットの考案である.主に国内木工インテリア業界の2つの産業地域における競争の文脈の形成・変容過程に関する現地調査を重ね,歴史的な資料の実質的な意味を読み解く上で必須となる当時の時代背景,取引慣行,業界内の人脈,業界内外の重要事象をつかむ貴重な証言群を収集してデータベースの完備性を上げると同時に,地域間比較に適う分析用データセット設計の考案に従事した.同じ業界で同じ時代を生きぬいてきた産業地域群を対象にした比較分析に適用し,競争の文脈の形成・変容過程を生成するメカニズムを高い精度で抽出する解析基盤になる.
|