2015 Fiscal Year Research-status Report
資本提携戦略がもたらす企業グループ再編に関する実証研究
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15K03605
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
大坪 稔 九州大学, 経済学研究科(研究院), 准教授 (90325556)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 第三者割当増資 / 増資 / 資本提携 / シナジー |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、日本企業を対象とし、企業間資本提携を構築する一手段として「第三者割当増資」に関する実証研究を行った。第三者割当増資は有償増資の一種であり、増資を実施する企業にとっては資金調達を意味する。一方、この増資を引き受ける側が機関投資家などではない、すなわち事業活動を行っている企業の場合、第三者割当増資は増資企業ー引受企業間の資本提携をもたらす可能性がある。 本研究では、上場企業を引受先とする第三者割当増資に着目し、なぜこれらの企業が他企業の第三者割当増資を引き受けるのか、に関する実証分析を行った。第三者割当増資を実施する企業の動機や株主価値への影響については、これまでの先行研究より十分な蓄積がある。これに加えて、増資企業の動機が引受企業の動機と密接に関連している可能性があるため、増資企業の動機を端緒として分析を行った。 その結果、日本企業で、かつ上場企業を引受先とする第三者割当増資については下記のことが明らかとなった。第一に、増資企業は経営不振に陥った経営状態を改善させるためと引受先企業との生産や販売面でのシナジーを追求して第三者割当増資を実施すること、その結果として増資が発行企業の株主価値を高めることが明らかとなった。第二に、引受企業は発行企業とのシナジーというプラスの効果と増資企業の救済から生じるマイナス効果が相殺され、増資引き受けが必ずしも引受企業の株主価値を高めるわけではないことが明らかとなった。第三に、引受企業については増資後に発行企業の株式の過半数を手に入れることで株主価値を高めることができることが明らかとなった。この結果は、両企業がシナジー効果からプラスの効果を得るためには、単なる資本提携ではなく、支配関係を構築する必要があることを示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、データの入力や分析などの作業は終了し、平成27年9月に証券経済学会 九州部会において報告を行っている。現在、この報告より得られたコメントなどをもとに修正を行い、英文の論文として投稿作業の段階に入っている。これらのことから、おおむね順調に進展していると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、第三者割当増資により構築された資本関係がどのように変化するのかについてイベントヒストリー分析を通じて明らかにする予定である。第三者割当増資により構築された資本関係は長期にわたり継続するケース、引受企業によって発行企業が買収されるケース、第三の企業が増資企業を買収するケース、など多様なケースが存在し、ケースにより資本関係の存続期間が異なる可能性がある。ここでは、存続期間の違いがなぜ生じるのかについて、イベントヒストリー分析を通じて明らかにする予定である。
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