2016 Fiscal Year Research-status Report
資本提携戦略がもたらす企業グループ再編に関する実証研究
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15K03605
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
大坪 稔 九州大学, 経済学研究院, 教授 (90325556)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 第三者割当増資 / シナジー / 資金調達 / 資本関係 / 資本提携 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、昨年度概ね実証分析が終了していた第三者割当増資に関する研究を英文にて執筆し、国際学会での報告、国際ジャーナルへの投稿を行った。具体的には、北京で開催された「The Eleventh RUC-Kyudai-NJU Joint Conferenceと、オーストラリアで開催されたThe 29th Australiasian Finance & Banking Conferenceで学会報告を行い、同論文をPacific Basin Finance Journalへ投稿し、2017年2月号に掲載された。 さらに、本年は債務の株式化について長谷工の事例にかんするケーススタディを実施し、その成果を経済学研究 (九州大学経済学会、2017年3月号)へ掲載した。同分析では、バブル崩壊後、不動産価格の下落および建設需要の低迷のために業績不振に陥った長谷工がいかにして再建を図ったのかについて、特にメインバンクをはじめとする「銀行との関係性」を中心として分析を行っている。同社はバブル期の銀行融資により得た多額の資金を不動産へ投資するものの、それがバブル崩壊後の同社の業績を極度に悪化させた。これに対し、同社は当時メインバンクであった三井信託銀行、大和銀行、日本興業銀行からの承諾をもとに借入先銀行からの負債を株式へ転換する債務の株式化を行うことで負債の大幅な削減を可能にしたのである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年より分析していた論文の海外での学会発表2回と海外ジャーナルの掲載を行うことができたこと、さらには債務の株式化に関する論文を新たに公表することができた点で、おおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は、企業による他企業の株式の一部取得に焦点を当てた実証研究を行う。支配権の移転を伴わない株式の取得はpartial acquisition、 toehold acquisitionsあるいは block purchaseと呼ばれ、ファイナンスの分野では取得者によるモニタリングの有無や大株主となった取得者と少数株主間の利害対立問題などの観点から分析が進められてきた。一方、企業による他企業株式の取得は資本提携となる場合が多く、その場合には企業間のシナジーなどの観点から経営戦略の分野を中心として分析が行われてきた。 本研究では、これら二分野の知見を活用しつつ、企業がなぜ他企業の株式の一部取得を実施するのかについて明らかにする予定である。この分野の研究では、被取得企業の株価がプラスに反応することが明らかとなっているため、取得企業の株価の反応及びその背後にある取得企業の動機について明らかにする予定である。 さらに、純粋持株会社の経済的機能の解明についても、同時並行的に分析を進める。周知のように、純粋持株会社形態は純粋持株会社である親会社とその傘下企業より構成された企業グループである。1997年に我が国において利用可能となってから15年以上が経過しており、実証分析を行うに足るデータが蓄積されつつある。そこで、本研究では蓄積されたデータをもとに純粋持株会社が企業グループの再編をもたらしたのか否か、再編の実施に資本関係のある企業が関与したのか否か、について分析を行う予定である。
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