2016 Fiscal Year Research-status Report
高機能自閉症スペクトラムの人の特性を活かした組織行動
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15K03608
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
吉永 崇史 横浜市立大学, 国際総合科学部(八景キャンパス), 准教授 (40467121)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 組織行動 / 自閉症スペクトラム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、知的に遅れがないものの、社会性、コミュニケーション、想像力の点で障害があるとされる高機能自閉症スペクトラムの人(以下、HFASD者)の特性を活かした職場での効果的な組織行動について明らかにすることである。 その目的の下で、本年度は、当研究代表者が2014年に実施した、HFASD者6名およびHFASD者の業務マネジメント担当スタッフ2名を対象としたインタビュー調査の分析を行った。調査結果の分析から、HFASD者の自身の所属する業務チームのチームワークを高めるための取組みについて、以下のように明らかにした。1) HFASD者の特性に基づく優れた能力(強み)だけではなく、その能力の発揮を阻害する弱みを認識した上で、他のメンバーやマネジャーとかかわりを持とうとする。2) チーム・メンバー間のチームワークを通じて生じたトラブルについて、マネジャーへの相談や報告、ミーティングへの立ち合いを通じてタイムリーに解決しようとする。3) 成果を実感することを通じて、メンバー同士の相互作用やチームの士気をポジティブに捉える。 加えて、HFASD者とマネジャーとの組織行動の相互作用について、以下のフレームワークを開発した。1)HFASD者が自身の特性を活かした組織市民行動を意識して管理スタッフや同僚からの支援を得ながら実践すると、2)組織市民行動それ自体がHFASD者の心身の健康を維持し、3)その結果として適度な自己肯定感に基づくワーク・エンゲイジメントを保ちつづけることができ、4)HFASD者の特性を活かしたタスクに対する、きわめて狭い範囲ではあるが卓越した成果が安定的に生まれ、5)それらの成果がチームワークによって組み合わされて新たな価値を生み出す環境が整うと、6)HFASD者の業務をイノベーションないし革新的な価値の創出の観点から捉えようとする志向性がマネジャーに生まれる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの研究において、HFASD者自身による業務を遂行する上でのチームワークを高めるための組織行動の分析と、HFASD者の組織行動と組織市民行動およびワーク・エンゲイジメントとの関係性についての検討に基づいて、HFASD者とマネジャーとの間のポジティブな相互作用についての研究フレームワークを開発することができた。 さらに、当フレームワークに準拠して、本研究の目的に沿ったリサーチ・クエスチョンを以下のように設定することができた。1)HFASD者の特性を活かしたHFASD者自身の組織市民行動とは何か、2)HFASD者の特性を活かした組織市民行動の実践が、HFASD者自身のワーク・エンゲイジメントにどのような影響を及ぼすか、3)マネジャーがHFASD者による組織市民行動の実践を期待することによって、マネジャーのHFASD者への管理/支援行動や、それらの行動に対するマネジャー自身の肯定的な意味づけにどのような変化が生じるか。本年度は、このうち「1)HFASD者の特性を活かしたHFASD者自身の組織市民行動とは何か」について、HFASD者の業務マネジメントの担当スタッフに対するインタビュー調査を実施した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、本年度に開発した研究フレームワークに基づいて研究を推進していく予定である。具体的には、「HFASD者の特性を活かしたHFASD者自身の組織市民行動とは何か」というリサーチ・クエスチョンに基づいて、HFASD者の業務マネジメントの担当スタッフを対象として本年度に実施したインタビュー調査結果の分析を行う。 さらに、当調査結果を踏まえて、本年度に設定した以下の2つのリサーチ・クエスチョンの妥当性について再検討した上で、引き続き調査を実施する予定である。1)HFASD者の特性を活かした組織市民行動の実践が、HFASD者自身のワーク・エンゲイジメントにどのような影響を及ぼすか、2)マネジャーがHFASD者による組織市民行動の実践を期待することによって、マネジャーのHFASD者への管理/支援行動や、それらの行動に対するマネジャー自身の肯定的な意味づけにどのような変化が生じるか。
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