2016 Fiscal Year Research-status Report
コーポレートファイナンスの視点によるアメーバ経営の研究
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15K03610
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Research Institution | The University of Kitakyushu |
Principal Investigator |
武田 寛 北九州市立大学, マネジメント研究科, 教授 (70405546)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | コーポレートファイナンス / アメーバ経営 / 資金調達 / 資本構成 / 経営思想 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は、「投資行動」の研究を中心に行った。中でも、投資の意思決定の前提と実践について、「企業経営の思想と実践」に関する研究を中心に実施した。論文「企業経営の思想と実践」では、以下の成果が得られた。第一にコーポレートファイナンスにおける経営思想の研究領域について考察し、企業の経営思想に関するコーポレートファイナンスの論点を整理した。ファイナンスでは、一般的に、狭義の文化である、信念と価値観または選好に焦点を絞っているが、アメーバ経営に関するこれまでの研究蓄積を活かすために、本論文では「経営思想」を定義した。これにより、経済学と経営学の研究成果を総合することが可能となり、百年や千年単位でしか変化しないような経営思想が重要であることがわかったので、第二に日本企業の経営思想として儒教について考察した。第三にアメーバ経営の事例研究として、京セラの経営思想は儒教の命題によって解釈可能であることがわかった。このようにアメーバ経営の意思決定の前提に経営思想があるという新たな知見が得られたことは重要である。 この経営思想とアメーバ経営とファイナンスとの関係についてはさらに総合的に研究し、英語論文「Transformative connections between culture and finance」を執筆し投稿した。その後、編集者のコメントを活かして改訂・再投稿しており、論文は平成29年度にSpringer社から出版されるHandbookに収録され、研究成果となる見込みである。これらの研究は、アメーバ経営の意思決定を経営思想という新しい観点から分析したもので大きな意義がある。 また「資金調達と資本構成」に関する研究は、国際共同研究に発展し、執筆した英語論文を改訂している。さらに「投資行動」に関する別の研究を進め、論文を執筆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「資金調達と資本構成」に関する研究は、(i)アメーバ経営の資金調達と資本構成をコーポレートファイナンス理論により分析した論文を平成27年度に公表し、予定通りに進んでいる。また(ii)アメーバ管理会計システムが資金調達と資本構成に与えている影響や、(iii)アメーバ経営における会計原則を含む経営哲学(フィロソフィ)が資金調達と資本構成に与えている影響についての研究は、平成28年度に国際共同研究に発展し、執筆した英語論文を改訂中であり、順調に進んでいる。 「投資行動」に関する研究は、アメーバ経営の意思決定を経営思想という新しい観点から分析した論文を2本執筆し、1本は公表し、もう1本も平成29年度に研究成果となる見込みであり、順調に進んでいる。また(iv)アメーバ経営の投資行動をコーポレートファイナンス理論により分析する、(v) アメーバ経営の部門別採算制度で使われている「時間当り採算」が投資決定基準として、どのように使われているか明らかにする、(vi)アメーバ経営における「時間当り採算」を、NPV法や回収期間法など一般的な投資基準と比較して、その効果や効率を明らかにする、点に関しても別の研究を進め、論文を執筆しており、順調に進んでいる。 以上の進捗状況から区分(2)とした。
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Strategy for Future Research Activity |
「資金調達と資本構成」に関する研究は、(ii)アメーバ管理会計システムが資金調達と資本構成に与えている影響や、(iii)アメーバ経営における会計原則を含む経営哲学(フィロソフィ)が資金調達と資本構成に与えている影響について、国際共同研究をさらに進め、英語論文を完成させ、研究発表する予定である。 「投資行動」に関する研究は、(iv)アメーバ経営の投資行動をコーポレートファイナンス理論により分析する、(v) アメーバ経営の部門別採算制度で使われている「時間当り採算」が投資決定基準として、どのように使われているか明らかにする、(vi)アメーバ経営における「時間当り採算」を、NPV法や回収期間法など一般的な投資基準と比較して、その効果や効率を明らかにする、点に関してさらに研究を進め、論文を完成させ、研究発表する。 平成29年度に進める計画の「ペイアウト(配当と自社株買い)」の研究については、「資金調達と資本構成」に関する研究と関連が深いため、また研究のインパクトを高めるために、前述の国際共同研究の中で総合的に研究することとしたい。
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Causes of Carryover |
国際学会に関わる旅費を予定していたが、国際共同研究の開始と共同研究における議論の進展等により、平成28年度は、論文執筆に注力し国際学会に参加しなかったため。また平成28年度は、英語論文の校閲を利用しなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
以下の費用に使用する計画である。 1、ファイナンス関係図書・アメーバ経営関係図書。2、パソコン関連の消耗品。3、調査研究・成果発表に関わる旅費。4、英語論文の校閲など。
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