2015 Fiscal Year Research-status Report
組織内個人間の理解共有強化過程に見る製造企業の品質創造経営の調査研究
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15K03615
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Research Institution | Surugadai University |
Principal Investigator |
海老根 敦子 駿河台大学, 経済経営学部, 教授 (30341754)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 品質創造経営 / 組織コミュニケーション・モデル / IFM(相互作用する場のモデル) / 組織のコミュニケーション管理 / 理解共有 / 品質創造力 / 製造企業 / 実態調査 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度の研究実績は次の通りである。 1.《相互作用する場のモデル(IFM)》の理論的改良:調査研究の計画と解析の基準となる組織内コミュニケーションのモデルとして《相互作用する場のモデル(IFM)》を過去15年にわたって継続的に開発してきたが,今回は定量性を追究する観点からコミュニケーションのミクロな構造に注目した。IFMに特徴的な理解共有の素過程の中の個人の内部の機能に踏み込んで情報と知的システムの相互作用を規定することにより理解の意味づけを定式化する理論的改良を行った。 2.世界的大規模製造企業実態調査データ解析:報告者が参加する「ハイパフォーマンス製造企業国際共同研究」が2012年から実施した世界的大規模製造企業第4次実態調査の中の日本企業の最新データを用いて組織内コミュニケーションの構造と機能を解析した。 3.今回得られた知見:(1)IFMの理論的改良の結果,①個人の知的システムが時空の各点で情報と相互作用することによって,理解を形成すると同時に情報を受発信しながら理解共有が進む素過程を明確に規定した,②この素過程が個人を結合してできる,時空に展開する組織内コミュニケーション活動の動的な構造と機能を定量的に論ずることに近づいた。(2)日本製造企業の最新データを解析して,品質創造経営に関する次の問題点を明らかにした。①品質創造に不可欠な顧客との関係が製造企業全体で脆弱である。②競争力強化にITS(Information Technologies and Systems)を活用しきれていない。 4.研究成果の公表:オペレーションズ・マネジメント&ストラテジー学会第7回全国研究発表大会で上記2の成果を口頭発表した。また,上記1の成果は平成28年度学会発表予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の常として,研究遂行の詳細は必ずしも当初の想定とは一致していない。当初の計画では,報告者が参加し,2012年から実施した世界的大規模製造企業第4次実態調査の最新データを使用して理解共有強化過程と品質創造力の構造的関係モデルを構築する予定であったが,データの質が想定と異なるために,調査対象の選定から構造的関係モデルの構築に至るまで研究遂行の抜本的見直しを迫られることになった。本研究と中核的目的を異にする上記実態調査は,製造企業の経営上重要不可欠な顧客との関係という視点の取り込みが十分ではないことが障害となった。この問題を解決するために,最高経営責任者や豊富な現場経験を持つ複数の実務経験者との討議から得た知見を基に,より高い適合性ある構造的関係モデルを構築すべく解析フレームワークの改良検討を実施した。同時に《相互作用する場のモデル(IFM)》の理論的改良を行った。本研究の最大の目的は,組織内コミュニケーションがいかにして製造企業の品質創造に貢献するか,その構造と機能を探究することである。IFMは,常に本研究の計画と解析の拠り所となる組織内コミュニケーションに関する本研究独自の基準モデルで,過去15年にわたって継続的に開発してきた。IFMの当面する課題は定量性の確立である。今回はコミュニケーションのミクロな構造に着目した。定量性は基礎から積み上げる必要があるからである。その上で,①個人の理解形成と②個人間の理解共有を強化する素過程と③複数の素過程が展開する時空を用いて,組織内のコミュニケーション活動の動的な構造と機能を論ずることができるように改良を施し,IFMの理論的かつ実用的精度の向上を図った。これらの成果に基づいて,平成28年度の研究を推進する。よって,研究は概ね順調に進捗しているということができる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度の研究実施推進方策は次の通りである。 前年度の成果を点検し,次の項目を実施する。〔手順1:ケーススタディー調査対象企業の選定〕当該年度の調査対象企業として,前年度協力を得た実務経験者に係わる製造企業の内から数社選定する。製造企業側が業務改善に積極的であり,本調査研究への協力により得られる調査成果のフィードバックに対して特に関心を持ち,自社に対する有益な知見をもたらすと判断しているか否かを選定の基準とする。〔手順2:ケーススタディー調査方法のデザイン〕前年度の成果を踏まえながら品質創造経営状態を表す構造的関係モデルに関するアンケート調査と面接調査の項目をデザインする。〔手順3:本調査の実施〕ケーススタディー調査対象企業を訪問し,企業現場の観察と面接調査とアンケート調査を実施する。〔手順4:調査結果の解析〕手順3の本調査の結果を解析する。企業組織内コミュニケーションの状態と組織内個人間の理解共有の状態と品質創造力の実態を把握する。構造的関係モデルをベースに調査対象企業の品質創造経営状態を診断し,その改善指針案を作成する。さらに,その解析結果を基に構造的関係モデルを検証し,企業現場への適応性向上を目指してモデルを修正する。〔手順5:調査結果のフィードバック〕手順4の調査結果の解析に基づく品質創造経営状態の診断結果と改善指針案を調査対象企業にフィードバックする。企業と有意義な討議を行い,構造的関係モデルに関する企業現場からの知見を得,信頼関係を強化する。〔手順6:調査方法の見直し〕手順5で得た知見を踏まえて,本年度の調査の欠落または不足している部分や不適切な部分を洗い出し,次年度の調査項目を決定する。〔手順7:IFMモデルの構築〕IFM(相互作用する場のモデル)の理論的発展に努める。〔手順8:中間報告の公表〕手順4の解析結果の研究成果を学会発表等で公表する。
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Research Products
(1 results)