2016 Fiscal Year Research-status Report
組織内個人間の理解共有強化過程に見る製造企業の品質創造経営の調査研究
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15K03615
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Research Institution | Surugadai University |
Principal Investigator |
海老根 敦子 駿河台大学, 経済経営学部, 教授 (30341754)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 品質創造経営 / 組織コミュニケーション・モデル / IFM(相互作用する場のモデル) / 組織のコミュニケーション管理 / 理解共有 / 品質創造力 / 製造企業 / 実態調査 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度の研究実績は次の通りである。 1.《相互作用する場のモデル(IFM)》の理論的改良:調査研究の基準となる組織内コミュニケーションのモデルとして《相互作用する場のモデル(IFM)》を独自開発してきたが,今回更に理論的改良を行った。前年度は,定量性を追求してコミュニケーションのミクロな構造を精密化したが,今回は,組織全体の理解共有状態の把握を重視して組織コミュニケーションのダイナミックスの表現法を開発した。 2.品質創造経営状態と組織内コミュニケーション状態の構造的機能相関モデルの開発:上記1で改良したIFMを応用して,製造企業の品質創造経営状態と組織内コミュニケーション状態の構造的機能相関関係が記述可能なモデルを開発中である。 3.今回得られた知見:(1)IFMの本質は,相互作用と場である。場とは,相互作用の素過程から形成された理解共有の状態が,組織内の理解共有などを強化する力を持つ現象をとらえた概念である。この強化する力,即ち場の強度をサーモグラフィー的表現で視覚的に理解する手法を開発した。これは諸学者に組織内コミュニケーションの本質を理解させる教育的意義がある。(2)IFMのコミュニケーションの素過程の内部構造の考察から,①個人間の理解共有を強化する素過程と②個人の理解形成過程に関連した製造企業のコミュニケーション状態と品質創造経営状態を把握する実態調査法を開発中である。 4.研究成果の公表:上記1の成果をThe 5th World Conference on Production and Operations Management Havana 2016 で論文集に執筆し,口頭発表した。また,The 6th International Symposium on Operations Management and Strategy 2016で口頭発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の常として,研究遂行の詳細は必ずしも当初の想定とは一致していない。本研究の最大の目的は,組織内コミュニケーションがいかにして製造企業の品質創造に貢献するか,その構造と機能を探究することである。本調査研究の主な計画は,①組織内コミュニケーションを記述する基準モデルの開発,②製造企業の品質創造経営状態と組織内コミュニケーション状態の構造的機能相関が記述可能なモデルの開発,③製造企業の実態調査の実施である。①で開発した基準モデルを応用して②の構造的機能相関モデルを開発し,そのモデルの解析フレームワークに則って開発したアンケート調査等を基に③製造企業の実態調査を実施する,という手順である。申請者は本研究の計画と解析の拠り所となる組織内コミュニケーションに関する基準モデル《相互作用する場のモデル(IFM)》を過去16年にわたって継続的に開発してきた。組織におけるコミュニケーション活動をより実態に即した記述可能なモデルにすべく,前年度に引き続き今回も,既存のコミュニケーション・モデルを調査し,比較検討しながら,IFMの理論的改良を行っているので,①組織内コミュニケーションの基準モデル開発に当初の想定以上の時間を要している。しかし,現実に即した実用的なIFMの理論的開発に伴い,個人の理解形成と個人間の理解共有を強化する素過程と時空の中に複数の素過程で構築される組織内コミュニケーション活動の動的な構造と機能が考察できるように改良を施すことが可能となった。更に,アンケート調査の質問項目の開発は,コミュニケーション場の強度の測定法の開発を伴うもので,これにも多くの時間を要した。これらの成果に基づいて,平成29年度は上記②と③の実施を推進する。よって,研究は概ね順調に進展しているということができる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度の研究実施推進方策は次の通りである。 前年度の成果を点検し,次の項目を実施する。〔手順1:ケーススタディー調査対象企業の選定〕当該年度の調査対象企業として,製造企業数社を選定する。製造企業側が業務改善に積極的で,本調査研究への協力により得られる調査成果のフィードバックに対して関心を持ち,自社に有益な知見をもたらすと判断しているか否かを選定の基準とする。〔手順2:ケーススタディー調査方法のデザイン〕目下開発中の改良IFMを応用した品質創造経営状態と組織内コミュニケーション状態を結びつける構造的機能相関モデルを完成させ,それに基づいてアンケート調査と面接調査の項目をデザインする。〔手順3:本調査の実施〕調査対象企業を訪問し,企業現場の観察と面接調査とアンケート調査を実施する。〔手順4:調査結果の解析〕手順3の本調査の結果を解析する。企業組織内コミュニケーションの状態と組織内個人間の理解共有の状態と品質創造力の実態を把握する。構造的機能相関モデルをベースに調査対象企業の品質創造経営状態を診断し,その改善指針案を作成する。さらに,その解析結果を基に構造的機能相関モデルを検証し,企業現場への適応性向上を目指してモデルを改良する。〔手順5:調査結果のフィードバック〕手順4の調査結果の解析に基づく品質創造経営状態の診断結果と改善指針案を調査対象企業にフィードバックする。企業と討議を行い,構造的機能相関モデルに関する企業現場からの知見を得,信頼関係を強化する。〔手順6:調査方法の見直し〕手順5で得た知見を踏まえて,本年度の調査の欠陥部分を洗い出し,次年度の調査項目を決定する。〔手順7:IFMモデルの構築〕IFM(相互作用する場のモデル)の理論的発展に努める。〔手順8:中間報告の公表〕手順4の解析結果の研究成果を学会発表等で公表する。
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Causes of Carryover |
平成28年度末の3月24日から3月26日にかけて出張した学会旅費の会計処理が年度末期限にかかってしまい,年度内の会計処理ができなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度の予算執行が可能になり次第,会計処理される。
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Research Products
(3 results)