2015 Fiscal Year Research-status Report
危機における組織行動と組織間関係を説明する理論的枠組み
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15K03622
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Research Institution | Showa Women's University |
Principal Investigator |
久原 正治 昭和女子大学, グローバルビジネス学部, 特任教授 (00319485)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 危機 / 組織行動 / マネジメントのミクロ的基礎 / 金融危機 / 原発事故 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、個別のミクロ組織の行動や組織間の関係が、いかにしてマクロの危機に結び付くかを説明できる統合的な理論枠組みを考える研究である。初年度にあたり、先行研究の資料集め、理論的枠組み策定のための学会等での議論を進めた。 具体的には、経営学研究でのミクロ基礎の理論が未整備であり、本邦での研究も見当たらないことから、最近のAcademy of Management(AOM)論文集等により、マクロの組織を説明するためのミクロの基礎理論に関係する関連先行研究を整理を進めた。また、2015年8月5-9日の間バンクーバーにて開催されたAOM第75回年次総会に出席し、関連研究発表に参加し関連研究者と意見交換を行うことで最近の当該分野の研究動向をフォローした。 これらの知見をベースに、2015年11月7,8日山口大学で開催された証券経済学会第84回全国大会において「金融危機を考えるミクロ基礎的経営組織分析の枠組みーマクロ危機とミクロ組織をつなぐー」と題して理論的枠組みと研究方法論を提起した。これに対して参加者より、従来のマクロ経済や金融制度の観点と異なる、ミクロの人や組織の行動から金融危機の要因を考えるという、金融危機の分野にミクロ基礎理論を応用した新たな研究方法論について一定の理解を得たうえで、これを具体的な事例に当てはめてどのように実証的研究を進めるかについて有益な指摘を受けた。 2015年度中にここまでの議論を論文にまとめる計画であったが、下記理由によりこの計画に遅れが生じている。一方で上記学会での議論を契機に、共著でミクロの国際銀行組織の分析に関する著書を出版する計画が立ち上がり、年度中に著書の枠組みと出版社の内定まで話を進めることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は当初、これまでの金融危機や原発事故の事例の資料を整理して、ミクロの組織の意思決定や組織間の関係と危機の広がりとを関係づける共通の特徴を導く中から、マクロの危機とミクロの組織の問題との関係を統合的に説明できる作業仮説を導き出し、これを論文化する計画であった。 しかし、平成27年6月急病で入院し、健康上の理由で昭和女子大学を28年3月末で退任し4月1日より久留米大学に移動することになった。 このような当初予期できなかった健康上の理由と所属大学の移動による研究環境の変化で、研究初年度の論文発表等の研究実績に当初計画と比べて遅れが生じている。 その一方で、実績欄に記述のとおり、学会発表を契機に金融危機とミクロの金融機関の行動の事例研究に関して共著を出版する計画が具体化したことは当初の研究計画では予定しなかったことで、28年度中に実現する予定のこの出版計画を通じ、本件にかかわる研究の問題意識を広く世に問うことができる可能性が出てきたことは、当初計画の進捗のの遅れを埋め合わせる新たな展開となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
28年度はまず、金融危機にミクロ基礎理論を応用した世界の主要な金融機関の経営組織に関する共著を執筆する計画を具体化する。本年前半はこの共著原稿執筆を通じてマクロの金融危機を説明するミクロ組織の基礎理論に基づいた米国の個別大手金融機関の組織に関する事例研究を進める。 併せて、昨年11月の証券経済学会全国大会での発表をベースにした、ミクロ基礎の理論を提起する論文の執筆を行う。これをベースに理論的検討を展開し、年度末に向けて経営学会等で新たな理論的枠組みの提起に向けた研究発表も進めていく。 また、この4月から着任した大学の医学部病院での医療事故を防止する事例が、本理論を適用する事例となる可能性が高いので、医学部の研究者との研究交流を深めることで、金融危機から医療リスクへ本理論を展開できる領域の拡大の検討に着手したい。本件に関して、28年7月医学部大学院のワークショップで問題提起の講演を行う計画が決まっている。 さらに来年度も内外の学会で本テーマを扱うものがあれば参加し、最先端の研究の動向を吸収し本研究に反映することとしたい。
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