2015 Fiscal Year Research-status Report
化学災害データによる組織のモメンタムの計量化と組織学習モデルの構築
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15K03624
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
大江 秋津 日本大学, 生産工学部, 助教 (90733478)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 組織学習 / 技術知識 / プロセスマネジメント / 化学災害 / マザー工場 / サプライチェーン / 組織のモメンタム |
Outline of Annual Research Achievements |
2015年度は、本課題に関する文献調査とデータ収集・インタビュー・事例調査・分析結果の対外的な発表をおこなった。 文献調査では、組織のモメンタムのメカニズムを説明できる可能性がある理論の収集をした。データ収集はリレーショナル化学災害データベースを利用し、データに企業名の掲載が無いことや不足情報があり、新聞や雑誌のデータベースから追加データ収集も行った。インタビューは分離技術会の協力で実現し、化学災害の研究者や現場の専門家に対して行った。事例調査も過去の事故や化学災害に関する記事の検索により行った。 以上の現段階で集められた文献・データ・インタビュー内容・事例から、研究目的である組織の行動の方向性を意味する、組織のモメンタムを実証するための仮説構築と統計分析を行った。結果は、分離技術会の講演会や経営情報学会と日本大学主催の学会で発表し、分離技術会の「分離技術」に分析結果の報告の掲載が決定している。さらに、組織学会での大会発表が決定し、投稿論文も査読中である。 その他に、本研究には2つの研究の派生があった。まず、工場の技術知識移転が組織のモメンタムに影響を与えると考え、日本のマザー工場制に着目した。グローバル工場の知識移転に関する理論研究調査と、自動車産業のグローバル工場データを収集し、ネットワーク分析を行った。結果は複数の学会で発表をし、経営情報学会誌にセレクションペーパに選定されて論文として掲載された。 もう1件は、新規開発のサプライチェーンゲームを利用した研究である。災害や事故が、サプライチェーン内組織の行動や学習の方向性決定要因を検討した。成果は複数の国内学会、国際学会だけでなく、工学教育に論文として発表した。 以上から、本研究は派生した研究や多くの対外発表と大きな成果があるが、データ収集途中であり、今後は研究を組織のモメンタムのメカニズム解明のためにまとめる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究が計画以上に進展している大きな理由は、3点ある。 まず、雇用したデータ入力等の研究サポート者が優秀であり、データ収集時に気が付いたことについて細かく報告してくれたことである。これにより、自分でデータ入力をしなかったにも関わらず、それに近い情報が得られ、分析時のデータ解釈の大きな助けとなった。 さらに、共同研究として多くの人と協力できたことである。組織のモメンタムの分析に対して、化学災害以外のデータの利用ができたことは、多角的な視点による分析ができたうえ、データを超えた普遍性もおぼろげながら見えてきた。 最後に、分離材料会からの協力が得られたことである。頻発する化学災害に懸念を持ち、様々な活動を行っている団体や所属者からの分析結果の強力な支援は、経営学視点からの研究内容に現場の人や化学災害の研究者からの正当性をつけ、大きな説得力を得ることができた。 以上のことは、本研究に多くの人が関わることにつながり、研究成果として対外的な発信力を高める大きな要因になると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、今後は海外への学会発表とデータの継続的な収集、分析精度の向上のための分析方法の改善を進める。また、昨年度は組織のモメンタムの負から正への転換をテーマとした分析を進めていたが、今年度は、正から負への転換についての分析を進めたいと考えている。研究成果は積極的に海外で発表するための英文化を行って国際学会等で発表し、フィードバックを得たうえで、英語論文投稿のための下準備を行う。データについては、年度が進んだことで、1年分のデータを追加するだけでなく、テーマの転換に伴って不足するデータがあればそれについても収集を行う。 派生した研究であるマザー工場のネットワーク分析については、昨年度はグローバル工場展開戦略によりマザー工場制も早いスピードで変化していることを明らかにした。この結果を踏まえて、今年度は組織のモメンタムの方向性の維持や転換にグローバル工場ネットワーク内のパワーバランスがあることに着目して研究を進める予定である。そのために、グローバル工場が所属する組織の資本関係に関するデータを収集予定である。また、ネットワーク分析をもとにした統計分析も行う。サプライチェーンゲームについては、ゲーム中に災害を発生させたデータを追加で収集する予定である。現段階では基礎的な統計分析のみであるため、理論研究の収集までもどって、仮説構築・分析を行う。
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Causes of Carryover |
データ入力作業が、プログラム作成による自動収集やデータ整形により効率化できたことによる人件費の減少がある。また、一定程度収集できた時点で分析をしたところ、良い成果がでたため、対外発表を優先したことによるデータ収集の一時停止がある。さらに、国際学会が国内であったことや、国内学会や講演会の多くが東京や近郊であったことによる旅費の減少があった。英語論文が1本のみであったため、英文校閲料が予想より少なかったこともその要因である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度は、派生した研究も含めてデータ収集とデータ入力作業が継続的に発生するため、その費用にあてる。また、国際学会への投稿を積極的に行うため、旅費や論文校閲量にもあてる予定である。
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