2016 Fiscal Year Research-status Report
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15K03629
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Research Institution | Kaetsu University |
Principal Investigator |
森谷 智子 嘉悦大学, 経営経済学部, 准教授 (00449365)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | STS securitisation / CMU |
Outline of Annual Research Achievements |
2008年から2009年にかけて生じた金融危機の間、欧州における証券化商品は、デフォルト率が低かったという検証結果が既に提出されているのは周知の通りである。特に、中小企業向けローン、住宅ローン、商業用不動産ローンを裏付けとした証券化商品のデフォルト率が低かったと高く評価されている。そのため、悪の証券化商品と位置付ける見解、そして検証から明確になった欧州における証券化商品市場の状況にはズレが生じているという意見もある。 このような環境のなか、ここ最近、欧州ではSTS securitisationの注目度が徐々に高まっている。ECBでは、欧州における証券化に関する共通ルールおよびSTSのフレームワークの策定が要請されてきた。また2016年3月、欧州委員会ではSTS securitisationに関する規制が提案されている。その際のドキュメントのなかには、健全な欧州の証券化商品市場は、欧州経済を支援する有意義的なもの且つ必須なものとして賛同されている。 そこで、本研究では、欧州におけるキャピタル・マーケットについて概観したうえで、欧州における証券化商品市場の現状について検証した。さらに注目されつつあるSTS securitisationとは何かを具体的に示すとともに、その基準について整理した。またSTS securitisationを推進していく中での抱える問題点について考察した。欧州における証券化商品市場における中心となる機関、とりわけECBの役割について検討し、STS securitisationが、もしくは証券化商品そのものがCMU(Capital Market Union)に貢献することになるのかについて考察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
STS securitisationにおける基準の発表、CMUの創設は着手されたばかりである。しかしながら、ここ最近では、欧州における証券化商品のなかでも、ユニークなものも組成されている。さらに、証券化商品に投資をする投資家も増加しているとの声もきく。欧州における証券化商品市場の回復の兆しが徐々に見られる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の課題として、中小企業の貸付債権が証券化商品の組成の対象になることにより、中小企業にとっても長期的な資金調達手段の多様化にもつながるものと考えられる。また、昨年から、欧州委員会、EIF(European Investment Fund、欧州投資ファンド)、そしてEIBが小規模ビジネスの資金調達のための支援機関であるSISI(SME Initiative Securitisation Instrument)の活動に着手している 。このプログラムの下で、保証もしくは買取業務を通して、SISIが証券化商品のクレジットリスクを引き受けていく構想が報告されている。このような活動により、中小企業のための証券化商品市場が確立することにより、緩やかな回復傾向が見られるであろうと考えられる。そのためにも、ローカルバンクが如何にして証券化商品市場と関わっていくべきなのかについて検討したい。
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Causes of Carryover |
書籍を注文したものの、発送の遅れが生じたため、次年度に購入を変更した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2017年4月以降に、書籍が郵送されるよう注文している。
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