2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K03636
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
野瀬 義明 同志社大学, ビジネス研究科, 准教授 (80633966)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 株主優待 / 配当 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は株主優待と他の株主還元策との違いの解明を試みた。具体的には、株主優待と類似の株主還元策である配当との違いをより直接的に検証した。 株主優待実施企業が増加している一方、株主間公平の観点から株主優待を取りやめる企業も増えている。その多くは優待金額相当分を増配するという変更である。この場合、企業からのキャッシュアウト(価値流出)の仕方が変わっただけで、ファイナンスの理論上株主価値への影響はないはずである。ところが検証の結果、株主優待から配当への政策転換のアナウンスは、たとえ等価であっても株価に負の影響を与えると示唆された。これは株主優待と配当に対する投資家の評価が異なることを示す。 また、優待利回りは個人投資家と機関投資家で大きく異なるが、政策転換のアナウンスが株価に与える影響は、個人投資家が得ている優待利回りで有意に説明できた。加えて優待廃止企業では、個人株主が離反していることも明らかとなった。 以上の結果は、配当が株主優待の代替手段とはならないことを示唆する。企業は、株主間の不公平を解消し株式市場からより高い評価を得るために、株主優待を増配に切り替えるとされるものの、実証分析の結果、その施策が皮肉にも株価に負の影響を与えると判明した。 研究結果は日本経営財務研究学会第40回全国大会(武蔵大学)にて発表し(題目:株主優待が株価にもたらす独自効果)、最終版は専門雑誌に投稿のうえ査読を受けているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画していた研究結果は、日本経営財務研究学会第40回全国大会(武蔵大学)にて発表することができ(題目:株主優待が株価にもたらす独自効果)、論文の最終版は専門雑誌に投稿のうえ査読を受けているところであるため。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度は、これまでの研究をより深掘りしていく方針である。 具体的には、研究計画①「株主優待が実施企業の株式長期パフォーマンスに与える影響とその要因の解明」は、より分析期間を拡大した再検証を行う。研究計画②「権利落ち日を基準とした、株主優待に対する投資家の評価の解明」も分析対象を拡大する。研究計画③「株主優待と他の株主還元策との違いの解明」は分析するイベントをより多面化していくことを考えている。以上を通じて、株主優待がもたらす影響とそのメカニズムについて確たる実証結果を提示したい。
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Causes of Carryover |
当該年度は、出張を電話会議等に切り替えたため旅費が節約されたこと、分析作業等の外注が計画より少なかったこと等により、次年度使用額が生じている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は分析作業の外注や研究に係る出張等も多数計画されているため、次年度使用額はその費用とさせていただきたい。
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