2016 Fiscal Year Research-status Report
被災地の復興における移動起業家の役割とエコシステム
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15K03643
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
福嶋 路 東北大学, 経済学研究科, 教授 (70292191)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 災害 / 移動起業家 / 地元起業家 / 起業の民主化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、震災後の起業活動と、中でも他地域から移動し起業を行う移動起業家の役割について考察することを目的として行われてきた。今年度はまず、東日本大震災以後の起業家の活動の現状を把握するために、2014年3月に発表された有限責任監査法人トーマツ「「仙台市における起業家支援のあり方に関する調査報告書」が作成された際に収集されたデータの再分析を行った。 また、震災から6年たった今年度は、仙台市産業振興事業団のご協力をうけ、当財団内にある起業支援組織、「アシ☆スタ」からの支援を受けて設立された事業者224社に対するアンケート調査を行い、震災後に起業した人々のバックグラウンドや活動状況について調査を追加した。回答者数を総計で121名から回答を得ることができた(回収率54%)。その結果、1.調査対象となったアシ☆スタの支援を受けた企業は、少なくとも314名の雇用を創出した、2.なかでも女性と、30代-40代の若い起業家が多かった、3.回答者のうち移動起業家は3名程度しかおらず、震災後現れた起業者の多くは仙台に在住することを前提として、起業に乗り出していた、4.回答者の中には起業経験者と起業初心者がいたが、両社の間で事業の拡大状況について、大きな差は見られないこと、などが明らかになった。 ハリケーン・カトリーナ後のニューオーリンズの復興プロセスにおいて、被災直後は移動起業家が起業の主体であったが、時間が立つにつれ地元住民が起業の主体になっていったという現象が観察されたが、仙台市の起業家シーンにおいても、移動起業家から、地元起業家が増加する段階に移行しつつある、つまり「起業の民主化」が仙台でも起こっている可能性を示唆すると思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年までの遅れが継続しているから。また、今年度は当初計画をしていなかったアンケート調査を組み入れたため、本来行うべきインタビュー調査が後回しになった。さらに調査の中間報告とのために予定されていた海外での発表が、私的な理由から、キャンセルをせざるを得ない状況に陥り、成果発表の機会を逸してしまった。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、移動起業家へのインタビューに集中することが考えられる。すでにリストや二次資料の収集は終わっているが、インタビューが十分に行われていない。よって今年度はインタビューを集中して行うことにしたい。またレビューも継続する。さらに、これら活動と平行して学会やコンファレンスでの発表を行っていく。
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Causes of Carryover |
今年度はインタビュー調査よりもアンケート調査を優先したから。またアンケート調査はウェブを使用したものを行ったので、印刷費、郵送費、データ入力に対する謝金等、当初アンケートにかかかると想定していた金額よりも大分安く行うことができたから。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
昨年度行う予定であったインタビュー調査を、今年度は徹底して行う。そのための交通費、謝金、テープ起こしに予算を使用する。また成果発表のために国内、海外への出張および英語論文の校正にあてる計画である。
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Research Products
(1 results)