2015 Fiscal Year Research-status Report
ドイツ企業における経営者の行動規範の形成と変容に関する実証研究
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15K03644
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
石塚 史樹 東北大学, 経済学研究科(研究院), 准教授 (40412548)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 企業統治 / 人的資源管理 / 公的規制 / 企業文化 / 金融危機 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究開始年度となる今年度においては、まず、ドイツ企業の取締役の全般的な行動様式の歴史的変容について把握するために、経営史・企業家論・人的資源管理の実証研究について二次文献の幅広いサーベイを実施すると同時に、企業の取締役の行動を扱った近年のメディアの報道を綿密に読み込み、基本的な傾向を把握することに努めた。一方で、ドイツでの現地調査を行い、事例研究の対象として選んだ企業の内部文書を手掛かりに、取締役の行動規範の変化をもたらした要因と経過について、正確な裏付けをとる作業を開始した。二次文献とメディア情報に基づく調査結果に関し、今年度中の成果は、共著書籍(柴田徳太郎編著『世界経済危機とその後の世界』日本経済評論社 2016年、第4章「金融危機後におけるドイツ銀行業界の諸問題」)において公刊され、銀行業界に焦点を当てて、金融危機直前から今日までの取締役の行動規範が論じられた。この際、金融危機までにドイツ企業の取締役が恒常的に問題ある行動をとる状況が生まれたこと、一方で金融危機後には、世間の圧力と公的機関による法的規制により、それを修正せざるをえなくなったことが明らかにされた。ここで課題として残されたのは、問題ある行動を許容する企業統治及び人的資源管理上の何らかの変化が1990年代から2000年代までの約10年間で起こったことは確実ではあるが、それがいかなる事情と要因によりもたらされたかを説明する要素を、現時点ではまだ仮説的にしか指摘できないことである。それを直接的に明らかにするための資料は確実に存在するが、時期的な問題(あまりにも最近のものであること)により、企業文書の開示許可が下りないという問題がある。従って、現時点では、迂回的なアプローチ法を考え出し、この問題に取り組む計画を練っている最中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
取締役の行動規範に関し、今日までの全体的な歴史的動向を把握することには成功した。一方で、1990年代から2000年代という、比較的短いが金融危機までの方向性を決定づけた変化が起こった時期に関し、その変化を解明する裏付けとなる企業資料へのアクセスが制限されているため。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、アクセス可能な最新の企業内資料の調査を幅広く推進する。可能であれば、退職した旧取締役へのインタビューを実施し、関連する情報を、企業秘密保持義務に反しない範囲で集める。
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Causes of Carryover |
物品購入費に関し、購入を予定していた書籍がさしあたり調達見込みがつかない状況となり、その分の予算額を執行できなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記の書籍を購入するために使用するか、今年度も当該書籍が見つからない場合、他の代替的な書籍の購入に充てる。
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