2016 Fiscal Year Research-status Report
ドイツ企業における経営者の行動規範の形成と変容に関する実証研究
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15K03644
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
石塚 史樹 東北大学, 経済学研究科, 准教授 (40412548)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 企業統治 / 人的資源管理 / 公的規制 / 企業文化 / 金融危機 / マネージャー |
Outline of Annual Research Achievements |
ドイツ企業の経営者の行動規範がいかに形成されたのかを一次資料の実地調査結果を中心に用いて解明しようとすることが本研究の目的である。これまでに、広範な文献のサーベイと試験的な調査に基づく仮説の設定作業を経て、2016年度中には、企業関係者とのインタビューと企業文書館でのオリジナルの企業文書の分析を中心とするドイツでの実地調査が実施された。前年度においては、ドイツ企業全般にわたる経営者行動とそれを規制する諸政策について中心的に研究成果を発表したのに対し、2016年度は有名な大規模化学企業数社の実地調査結果を通じて得られた、多量の情報を含むインタビューの内容と企業内部文書の分析が徹底的に行われた。この結果に基づき、一論文がまとめられ、現在、出版準備中である。前年度から大きく進歩した点は、ドイツ企業の経営者の行動様式が企業ポートフォリオ・マネジメントの重点化に規定された一方で、金融危機以降の時期においては、その多様性を有する発展の存在を発見したことである。具体的には、化学企業では全社戦略から生産戦略への企業経営の重心の再シフトが経営者の人選や経営者の意思決定に観察されるようになったこと、また、意思決定のありかたも、CEOへの意思決定権の集中から、旧来の多人数での取締役会内部での全会一致を志向するようになったことなどが、特筆される変化として指摘できる。また、中規模企業においては、企業トップの行動規範が、従来通り技術の論理を主な動因としてに形成されていることも明らかとなった。一方で、化学企業のような輸出志向のメーカー、小売業のような内需を志向する産業、停滞に苦しむ大規模金融業の間では、金融危機以降、経営者の行動規範に関し多様性を伴う異なる発展がみられるのではないかという大きな問題が浮かび上がってきた。今後は、このような視点も踏まえつつ、研究の遂行をはかる必要性が認識されるようになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2016年6月に、重点的な調査対象となっている企業(ルール地方)において、大規模な水害が発生した。具体的な被害としては、記録的な大雨で発生した多量の雨水が、地下に位置する企業文書館の文書倉庫並びに事務室、作業室全域にわたり侵入し、同文書館の機能が停止状態に陥ったことが挙げられる。外部の訪問者を再び受け入れるようになったのが2016年11月ごろとなり、本来は同年9月に同文書館において予定していた調査が実施できなかった。従って、調査ができたのは2017年3月以降となってしまったことにより、一回分の調査が先延ばしとせざるを得なくなった。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度においては、上記の事情により先延ばしとなった分の実地調査を予定に加えて、研究課題を遂行することとなる。また、インタビュー先についても、従来の訪問先がさらに別の企業のインタビュー相手を紹介することに前向きであるため、このような新しい調査先を加え、研究課題遂行のための調査の基盤のすそ野を広げつつ、課題の遂行を試みる。
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Causes of Carryover |
2016年6月に、主要な調査対象として選ばれた企業(Evonik AG、マール事業所)において、大雨を理由とする大規模な水害(各部署の事務所への大規模な浸水)が発生し、資料収集先となる部署の機能が停止することとなった。この結果、数か月の間、同企業における一切の調査が不可能となった。このため、同年9月に予定していた調査活動を半年延期せざるを得なくなった。このアクシデントにより、当初に予定していた一回分の調査が今年度にずれ込むこととなったことが、次年度使用額が生じた決定的な理由である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記に記した事情により、今年度にずれ込まざるを得なくなった一回分の調査を実施し、今年度の使用額として支出する予定である。
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Research Products
(6 results)