2017 Fiscal Year Research-status Report
ドイツ企業における経営者の行動規範の形成と変容に関する実証研究
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15K03644
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
石塚 史樹 東北大学, 経済学研究科, 准教授 (40412548)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 企業統治 / 人的資源管理 / 金融危機 / 企業組織 / 資本主義の多様性 / マネージャー / 産業特殊性 / グローバル化 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度においては、これまでに実施した、ドイツの代表的企業数社の現役のマネージャーに対するインタビュー、および企業文書調査、さらに企業統治・雇用システムにかかわる国際比較研究の二次文献の広範なサーベイ結果を基礎として、1970年代から今日にわたる経営者の行動規範の変化傾向を見出すとともに、その既存研究との整合性及び位置づけを探った。実地調査で明らかとなった、ドイツ企業に伝統的な企業内慣行の残存とその経路依存性との関連、一方でのグローバルスタンダードの受け入れがもたらした、いわばハイブリッド型のシステムの形成が見いだされ、本研究の研究対象となる領域においては、日本企業と似た文脈でドイツ企業が変化してきたことが明らかになった。一方で、当該年度における研究は、これまで国際比較研究の主要な研究対象となってきた、製造業を中心とする外需志向産業のみならず、国内向け業務を付加価値創造の源泉とする内需志向産業にも射程が及んだ。これにより、外需志向産業では1970年代以降進んだ変化が高成長を誇ってきた小売業の一業態を中心とする内需志向産業では認められず、有力な競争モデルとして残存し続けていることも明らかになった。さらに、ハイブリッド型のシステムを発展させてきた企業でも、金融危機以後は産業ごとに独自の方向で進化を続けていることも明らかとなった。今後は、グローバル化のもとでも残存、あるいは強化されつつある一国内での企業システムの在り方の相違をいかにして理論的に説明していくのかが、結果として問題提起された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の重点的調査対象とされた企業の一つで、前年度秋に大雨による大水害が発生したことで調査遂行が著しく困難となった。特に企業文書の避難や防水対策のための工事が長引いたこともあり、当該企業へのアクセスが当該年度においても著しく制限された。さらに、予定していたインタビューが、当該年度に生じた一部企業を取り巻く諸事情により不可能となったことも、当初の予定とはやや異なる迂回的な調査遂行の方向性を模索させることとなった。一方で、修正された調査計画によりもたらされた知見が研究の方向性の革新をもたらすこととなり、当初計画の遅れを大きく埋め合わせる成果につながった。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の調査重点企業が今後、水害によりもたらされた混乱から完全に脱却することが確実であるため、当初の研究計画通りの調査を遂行する。一方で、当該年度に拡張された調査対象および調査テーマを維持発展させ、より充実した研究成果を上げる予定である。
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Causes of Carryover |
当初の重点的調査対象とされた企業の一つで、前年度秋に大雨による大水害が発生したことで調査遂行が著しく困難となった。特に企業文書の避難や防水対策のための工事が長引いたこともあり、当該企業へのアクセスが当該年度においても著しく制限された。さらに、予定していたインタビューが、当該年度に生じた一部企業を取り巻く諸事情により不可能となったことも、当初の予定とはやや異なる迂回的な調査遂行の方向性を模索させることとなった。このような事情により、経費の予定支出額と実支出額との間に相違が生じることとなった。今年度は、当初予定していた重点的調査企業における調査を十分に遂行することで、使用額を全額支出する計画である。
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