2015 Fiscal Year Research-status Report
地域特産品のブランド構築戦略と価値連鎖構造に関する比較研究
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15K03660
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
松隈 久昭 大分大学, 経済学部, 教授 (60238996)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ブランド / 価値連鎖 / 地域団体商標 / 特産品 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の第1の目的は、事例研究とアンケート調査に基づき、地域特産品のブランド構築戦略と価値連鎖(バリューチェーン)の構造を比較分析し、事業経営の成功と失敗の要因を示すことである。その分析枠組みとして、ブランド化戦略についてはブランド論、ブランドを形成する要因の分析としては価値連鎖を用いる。以上により、地域特産品のブランド化に関する課題と改善のための方策を示す。 本年度は、地域特産品の中から地域団体商標を得ている農産物(野菜と果実)を生産する組合を対象として、プリテストとなるアンケート調査を行った。主な質問項目は、消費者に対してアピールしたい点、地域団体商標の取得によって生まれた効果、ブランド力の自己評価、組織力などである。さらに、組合の経営資源の優位性を評価する項目も組み入れた。 プリテストの主な質問項目は、リッカート尺度(5段階)により回答を求めた。その結果、地域団体商標の取得により「安定的な販路の確保」、「販路の拡大」、「組合員の意欲の向上」、「ブランド化への満足」という項目に効果が見られた。その他にも、「ブランド力の強さ」、「品質を超えた何らかの魅力がある」、「品質と価格が同じならば消費者は競合品よりも当該商品を選ぶ」という質問にも肯定的な回答を得た。一方で、ブランド化に満足していないという回答もあり、必ずしも成功例ばかりではないことが分かる。 今回プリテストの対象とした農産物は、野菜と果実であり、基本的に収穫後の鮮度保持が難しいという特性を持つ。また、それらは形質や品質にばらつきがあるので、等級・階級に分けるという選果が必要である。つまり、迅速に消費者に届ける流通システムの構築が求められる。価値連鎖の一部となる流通システムについては個別の事例研究が必要なので、次年度に行いたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
27年度は、地域特産品の中から地域団体商標を得ている農産物(野菜と果実)を生産する組合を対象として、プリテストを行った。その結果、地域団体商標の取得により生まれた効果、ブランド化に必要な要因、組織力などを把握することができた。 今後は、各農産物の価値連鎖の構造を分析し、事業経営の成功要因を示したい。また、それ以外の地域特産品のブランド構築戦略と価値連鎖の構造についてもアンケート調査を行い、分析を進めたい。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、前年度のプリテストの結果をみて、アンケート内容の改善を行う。その後、代表的な地域特産品の生産者と卸・小売業者を対象にアンケート調査を行う。 なお、ブランド、価値連鎖、戦略的アライアンス、組織能力に関する具体的な質問項目は、プリテストや既存の研究を参考にして作成する。また、ブランド化に関しては、品質優位性、イメージ優位性、安全性、希少性、物語性などを質問する。 アンケート結果は、重回帰分析等により競争優位を規定する要因を示す。また、共分散構造分析により、ブランドの構成要素間の因果関係を分析する。さらに、生産者、卸・小売業者の価値連鎖とブランド化に関する意識の違いについては、分散分析や平均値の差の検定等を用いて検証する。
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