2016 Fiscal Year Research-status Report
制約が起点となり創造された新カテゴリー製品の開発―お茶PRESSOの事例研究―
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15K03672
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Research Institution | Dokkyo University |
Principal Investigator |
陰山 孔貴 獨協大学, 経済学部, 専任講師 (90707043)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
竹内 竜介 横浜国立大学, 大学院国際社会科学研究院, 准教授 (30607940)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 脱カテゴリー製品 / 製品開発 / 技術者の思考枠組 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は、主に以下の3つの取り組みを行った。 ①昨年度から継続する「ヘルシオお茶プレッソ」の開発経緯に関する調査研究:昨年度に引き続き、「ヘルシオお茶プレッソ」の開発経緯に関する調査研究を行った。同製品は、当初は既存の製品カテゴリーに属する製品として開発が行われたが、開発途中に路線変更を行い、既存の製品カテゴリーから脱し、独創的な価値を持つ新しい製品として開発がなされた。こうした既存の製品カテゴリーから脱却した製品を「脱カテゴリー製品」と定義し、付加価値の高い独創的な脱カテゴリー製品の開発を実現するプロセスとその仕組みの解明を行った。その結果、既存の製品カテゴリーによって想定されるパラダイムといった技術者たちの思考枠組が、脱カテゴリー製品の開発を実現するときに、大きな影響を及ぼしていることが分かってきた。 ②製品開発研究史上における本研究・事例の位置づけの検討:製品開発に関する研究における本研究・本事例の位置づけの検討を行った。本事例は、既存の製品カテゴリーにはない独創的な製品であるため、これまでにない新たな価値を持つ製品であった。そこで、平成28年度は、製品価値に関連する製品開発研究やマーケティング研究の検討を行った。同時に、他の製品開発研究に関する情報収集や吟味、方法論に関する検討なども実施した。 ③創造的な新製品開発という現象に関する予備的調査:創造的な新製品の開発という現象における本事例の位置づけを考えるべく、同業他製品および他業種の製品の製品開発に関する情報収集を行った。以上の結果、主に①と②の成果として、平成28年度中に以下の論文を発刊した。 ・陰山孔貴・竹内竜介(2016)「脱カテゴリー製品の開発プロセス-お茶メーカー「ヘルシオお茶プレッソ」の事例研究-」『国民経済雑誌』214(1): 1-20.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請時においては、開発者たちが直面するさまざまな「制約」が、新製品開発に際しての「正当性」を得るための起点になりうる点を明らかにすることを目的としていた。ところが、調査研究を進める中で、本事例における「制約」と「正当性」との関係性を見出すことは困難であることが明らかになってきた。 そこで、新しい製品カテゴリーになるような創造的な新製品の開発がなされるプロセスやメカニズムを、改めて抽出した。その結果、まず注目したのが、製品価値の高め方であった。既存の製品カテゴリーとは異なる独創的な製品を生み出す際に、いかに新たな価値を製品に付与するのかを明らかにした。 そして、開発者たちが持つ思考枠組といったある種の制約が、新製品開発の際に影響を及ぼしていることが分かってきた。そのため、創造的な新製品開発を達成するプロセスにおいて、こうした思考枠組がどのような状況だったのか、どのように影響を及ぼしてきたのかという点に重きを置いて、研究を展開した。 このように、平成28年度から、当初計画とは異なる観点からの調査、分析を行った。ただし、すでに本事例を基にした論文を発刊しており、成果は順調にあげている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究方針の路線変更を受け、今後は以下の取り組みに努める。 ①引き続き、ヘルシオお茶プレッソに関する情報のアップデートや追加調査。 ②競合製品や他業種において既存カテゴリーから脱却を果たしたような創造的製品に関する情報収集。 ③製品開発研究史上における本研究・本事例の位置づけの検討。 平成28年度は、製品価値に関する研究を中心に先行研究をレビューしたが、創造的な新製品開発および開発者たちの思考枠組に注目して、先行研究の整理・検討を続ける予定である。そして、最終年度では以下の成果をあげることを目指す。第一に、関連する学会での、自由論題報告として発表し、研究成果についての共有を図るとともに、そこでのディスカッションを通して、研究の精緻化を図る。第二に、関連する学術誌での成果発表。
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Causes of Carryover |
研究の方向性の路線変更を行ったため、ヘルシオお茶プレッソやシャープ株式会社に関する追加調査、競合製品や他業種製品についての情報収集、製品開発研究に関する新たな文献収集などが必要となった。 また、これまで収集した資料等の整理・保管、論文投稿や学会発表のための諸経費が必要となる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
情報収集・研究を進めるための書籍・資料や備品の購入の継続、情報収集・打ち合わせ・研究報告のための旅費などが主な使用目的となる。
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Research Products
(1 results)