2016 Fiscal Year Research-status Report
大卒女性専門職の「納得のいくキャリア」とその形成支援:戦力化に向けた雇用管理
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15K03677
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
細萱 伸子 上智大学, 経済学部, 准教授 (50267382)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大内 章子 関西学院大学, 経営戦略研究科, 准教授 (20335110)
竹内 明香 上智大学, 経済学部, 准教授 (40506135)
新井 範子 上智大学, 経済学部, 教授 (50286134)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 女性 / キャリア / 転職 / 子育て支援 / サービス / 学歴 / 都道府県 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は前年度に引き続き、女性個人側の研究を推進した。特に昨年度の結果から、女性の生涯にわたる就業継続については、子育ての影響と同時に、転職経験の影響も強いことがインタビュー調査からも明確になった。したがって、今後の研究の焦点を転職経験が女性のキャリア形成に及ぼす影響および子育て支援と転職を含めたキャリア形成の関係に置くという方針が得られた。これらの問題について、転職経験とキャリアの節目ともいわれる転機の関係について学会報告を行った。さらに子育て支援との関連については、国際学会報告を行った。これらの結果を通じて、最終年度に向けての研究焦点、すなわち転職経験とそれをサポートする支援体制の構造解明という論点が明らかになった。 量的データについては、前年度購入した大規模データのクリーニングが終了し、実証研究の結果、都道府県別データの推計結果が明らかになった。都道府県の経済状況が既婚女性有業率に影響を与えるか、最終学歴が大学卒と大学院卒となる2 つのグループについて、他の最終学歴のグループと異なるか比較をした推定結果から、都道府県の経済状況を含む地域の特性が有業率に影響を与えていることが示されたが、学歴ごとの差異は確認されなかった。個人に関する変数のうち子供の数については、大学院卒以外では、先行研究と 同様に子供の数が増えると有業率が増加するが、大学院卒の場合子供の数が増えると有業率が下落するということが確認された。そのため、本研究の結果の精度を高めるためにも納得いくキャリアの追求の具体的方策に関連する部分での地域と子育て、本人のキャリア像に影響するものとして学歴や子育てが関連するという図式が確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
個人側の要因に関する量的データの分析は第一段階が終了し、第二段階の個別データに移った。今後データの追加を適宜しながら、パネルデータの分析に移る予定である。女性就業者個人に関するインタビュー調査は、子育て支援と転職経験という2つの論点が析出され、報告がすでに出始めている。企業調査については購入予定のデータが高騰しまた無回答のデータが多く使いにくいことが判明したため、ウェブ調査を含めてほかの方法を考えている。そのため最終年度に繰り延べて実施する。
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Strategy for Future Research Activity |
1量的調査研究の充実 平成29年度は、前年の結果を受けてパネル・データを用いた分析を行い、年度ごとの特殊効果(以下、時間効果)、個人による固有の効果(以下、個別効果)を取り除いた、説明変数との関連性を見る。代表的なモデルは非線形関数の違いによって2種類あり、ロジット分布を用いるロジット・モデルと正規分布を用いるプロビット・モデルがあるが、本研究では両方のモデルを用いて分析する。これら時間効果と個別効果をモデルに取り入れることで、クロスセクションデータの推定結果と変化したか検討する。さらに、パネル・データを用いた分析を詳細にみることによって時間効果と個別効果を扱いモデル化し、検証する。検証結果を受けて報告を作成、公表する。 2女性のキャリア形成と活用のバランスを左右する要因の構造 後半で各調査の結果を統合し、報告書の準備を行う。以上の調査研究で確認された傾向を取りまとめ、高学歴女性を題材にキャリアの納得性を高めつつ就業を継続するに向けて必要な条件が成立するのはどのような動向に依存するのかについて、本人の戦略行動、企業の戦略、環境要因のバランスという立場から考察する。理論枠組みとして整備することにより、研究成果の一般化を図る。
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Causes of Carryover |
28年度の購入を予定していた企業における女性活用支援策の情報を含んだデータベースの価格が見積もり当初より高騰してきたこと、さらにそのデータにおける関連項目の回答率が低いことが詳細見積もりのプロセスで判明したため、企図した精度のデータが得られない可能性があることから、購入を見合わせた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
29年度はデータの購入ではなく、WEB調査の規模を拡大することによって、独自のデータベースを構築する。そのための調査費用として用いる。現在すでに見積もりを取得し、調査計画を推進している。さらに子育て支援との関係で遠距離にいる親族の影響も看過できない可能性が見出されてきた。特に女性の海外との関連でのキャリア展開についてこの問題に注目する必要が生じている。そのため、29年度はこのテーマについて海外での聞き取り調査を実施することとしたい。具体的な調査地候補としてハワイ,香港を取り上げる予定である。その理由は、女性の海外就業に関する目的地として比較的人気があること、調査者の個人的ネットワーク利用から一定のサンプル数が得られやすいことなどである。
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Research Products
(7 results)