2016 Fiscal Year Research-status Report
日本企業における女性労働力の活用に関する研究ー欧米企業との比較考察
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15K03678
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Research Institution | Daito Bunka University |
Principal Investigator |
長谷川 礼 大東文化大学, 経営学部, 教授 (10247249)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長谷川 信次 早稲田大学, 社会科学総合学術院, 教授 (90218446)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 女性労働 / 労働国際比較 / スキル特性 / 性別スキル比較 / 外資系企業 / 転職 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、日本における女性労働力活用の促進に資する研究成果をあげることを目的とする。このテーマに対して、次の2つの視点に依拠し分析を進める。第一に、欧米系多国籍企業における女性労働力活用の実践的試みと、その日本での適用可能性を探ることである。この点については、2015年度、フィンランド、フランス、ドイツにおいて、延べ30名近くの関係者にインタビュー調査を行った。今年度はその調査結果を踏まえ、疑問点を洗い出し、OECD等のデータベース、各国の各種データ等からの資料をまとめ国際比較を行った。 結果は、6月、SASE(Society for the Advancement of Socio-Economics)年次国際大会において報告すると同時に、大東文化大学経営研究所より英文リサーチペーパーとして発表した。比較対象国は、フィンランド、スウェーデン、フランス、ドイツ、米国、日本である。比較項目には、Progress, Working conditions, Education/Training/Skills, Management, Venture business, Work-life balance等が含まれる。 また、人事制度は重要な要因であるが、九州に本社をもつ外食チェーン企業において、限定正社員制度を強化するなど、大幅な人事制度の拡充が図られ、女性従業員の労働条件も改善した。当該ケースについて、インタビュー調査を申請、説明を受けると同時に資料の提供があった。 第二の視点は、労働者のスキル特性がキャリアに及ぼす影響の解明である。各労働者が体得した具体的かつ多面的なスキルの組み合わせをスキルの特性と捉え、転職実績、キャリ開発の将来性との関連性を解明することであるが、この点については、本年度は大きな進展はなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2015年度は、日米欧の労働市場のあり方、および多国籍企業の人的資源管理手法に関する資料や先行研究をサーベイし、それと並行して国内外においてインタビュー調査を実施した。日本国内においては、ドイツ系外資系企業の人事部長に対してダイバーシティマネジメントの取り組みに関するヒヤリングを行い、当該企業のドイツ本社においてもダイバーシティマネジメントの責任者および何名かの女性従業員にヒヤリングを行った。他にも、外資系企業勤務経験および転職経験の両方をもつ実務家、および日本企業と外資系企業の間の転職経験のある女性管理職経験者にインタビューを行った。いずれにおいても、保有するスキル、転職に役立ったスキル、そうしたスキルを獲得した方法などについて回答を得ることができた。 また9月上旬にフィンランド、ドイツ、フランスを訪問し、JETROヘルシンキおよびパリ、欧州企業5社、在欧日系企業3社、および労働者、研究者を含む現地の方々、駐在および現地採用の日本人等、延べ30名弱の方々とヒヤリングあるいはグループディスカッションを実施することができた。そこでは、各国の労働政策、企業の取り組み、ワークライフバランスや働き方の実情、保有するスキル、転職に有利なスキル、スキル獲得のプロセス等について、回答を得た。 2016年度は、2015年度の成果をSASE(Society for the Advancement of Socio-Economics)年次国際大会で発表すると同時に、大東文化大学経営研究所より英文リサーチペーパーとして発表した。また、九州に本社をもつ外食チェーン企業において、限定正社員制度を強化するなど、大幅な人事制度の拡充が図られ、女性従業員の労働条件も改善したことを受け、当該企業にてインタビュー調査を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度中に作成する予定であった質問票作成を行う。学術的な先行研究、実務的な資料、および国内外でのインタビュー調査資料等から分析フレームワーク、および仮説の構築を行い、仮説検証のための質問票を作成する。 ウェブ調査の形で個別労働者に対するアンケート調査を実施して、データを収集する。個人の属性に偏りなくサンプルを抽出すべく、ウェブ調査実施企業との綿密な打ち合わせを行う予定である。日本企業の労働者、外資系企業の労働者、男性と女性の労働者などの比率に配慮するよう詳細を打ち合わせる。予定としては、日/男、日/女、外/男、外/女、4グループでそれぞれ最低300件、合計最低1200件のデータを収集する予定である。 収集したデータを用いて多変量解析を行うが、多面的な比較分析が可能となることを期待している。分析結果に基づいて、最終的には、①企業に対して女性労働力の効率的活用を図るための人的資源管理実践上のインプリケーションを提示する、②女性労働者に対してキャリア向上のための行動の指針を提示することを目指す。分析結果およびインプリケーションについては、国内外の学会での報告および学術誌への投稿を予定している。
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Causes of Carryover |
2016年度に実施予定であったウェブ調査を実施できなかったために、2017年度に実施することとし、調査費用を2017年度に繰り越したため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
より多くのデータを、よりリーズナブルなコストで収集するために、3社程度のウェブ調査企業から見積もりをとる予定である。当初の予定では、日本企業勤務の男性社員、日本企業勤務の女性社員、外資系企業勤務の男性社員、外資系企業勤務の女性社員という4グループで、それぞれ最低300件、合計最低1200件のデータを収集することになっているが、可能であればさらに多数のデータを収集したい。データの件数が多ければ、傾向スコア分析といった形で、同じ特性を持った社員のデータだけを抽出して比較することも可能となるであろう。
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