2017 Fiscal Year Research-status Report
日本企業における女性労働力の活用に関する研究ー欧米企業との比較考察
Project/Area Number |
15K03678
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Research Institution | Daito Bunka University |
Principal Investigator |
長谷川 礼 大東文化大学, 経営学部, 教授 (10247249)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長谷川 信次 早稲田大学, 社会科学総合学術院, 教授 (90218446)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 女性 / 労働市場 / 男女比較分析 / 離職意向 / 企業特殊的スキル / 積極性 / 組織コミットメント |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、日本市場における女性労働力の活用を促すための示唆を探るものである。初年度は女性労働力の活用における先進的な地域、国という観点から、ヨーロッパ諸国を訪問、実態調査をした。30名近くの男女労働者にインタビューを行い、日本の現状と今後を考察する上での、多くの有益な示唆をえることができた。その成果は、2016年10月、“Skills and Career Paths of Female Workers in Developed Countries”, として、大東文化大学経営研究所のリサーチペーパーにまとめた。その中で、北欧に見られる積極的労働市場政策の基本理念である低成長産業から高成長産業への労働力のスムーズな移動が、日本において女性労働力を考える場合にも重要であり、スキルの育成と積極的転職、キャリア開発に結びつく転職が可能であることが必要不可欠な要素と考えるに至った。そのため、スキルと離職意向の関係、あるいは、より広範に離職意向の決定要因を探ることが必要であるとの結論にいたった。したがって、2013年2月にウェブ調査により収集したデータを使用して、男女従業員の離職意向の決定要因を探るための分析を行った。離職意向を非説明変数として、スキルの企業特殊性や積極性といった複数の説明変数を含む重回帰分析を行った。従業員の感じる勤務先企業の将来性に関する認知が、積極性などの性格が離職意向に対して及ぼす影響に対して、どのような調整効果を発揮するかも探った。男女で極めて異なるパターンが検出され、女性においては積極性が単独で離職意向の上昇に非常に強く影響をしていることが明らかにされた。積極的理由で転職を考えた場合、上述のスキルと本人の希望がマッチする転職に結びつく可能性が高いと考えられるであろう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画では、2016年度にヨーロッパ諸国の実態を明らかにし、その結果に基いて、2017年度にウェブ調査を実施する予定であった。しかしながら、研究実績の概要で示したように、拙速にウェブ調査を実施する代わりに、予備的な実証研究、すなわち2013年2月にウェブ調査により収集した約600件のデータを利用して、重回帰分析を行い、男女間の比較を行いながら、どのような説明変数が離職意向を説明できるかを検討した。そこで、さらに新たな視点が提起された。一旦収集するとやり直しはできないため、データ収集の前にさらなる実証分析を積むべく、ウェブ調査を2018年度に持ち越すことを決めた。
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Strategy for Future Research Activity |
上述の現在までの進捗状況で示すとおり、現在、ウェブ調査によるデータ収集の前に、さらなる実証分析を行っているところである。2017年10月のリサーチペーパーでは扱わなかった説明変数、例えば組織コミットメント、ジョブ満足度などを投入し、重回帰分析ではなく、分散共分散分析の多母集団同時分析という手法を用いて、男女間での離職意向の決定要因を探る。その成果は、まず来る2018年6月の学会で発表する予定である。それらの結果も踏まえて、今年度、ウェブ調査を実施し、さらなる詳細な分析を行う予定である。
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Causes of Carryover |
2017年度に実施予定であったウェブ調査の実施を遅らせたことが、次年度使用額が生じた理由である。調査を遅らせた背景には、今後の研究の推進方策に示す通り、2017年度から2018年前半にかけて、過去のデータを用いた予備的実証分析を行ったことがある。この予備的分析の結果を踏まえることで、より実践的な成果の見込めるデータ収集を行うことが可能であると考えている。
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Research Products
(2 results)