2017 Fiscal Year Annual Research Report
Long term case studies late comer effect-RBV analisis on entrepreneurship-
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15K03679
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
久保 文克 中央大学, 商学部, 教授 (00256017)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 後発企業効果 / 後発企業 / トップ企業 / 逆転 / マーケットシェア / 食品 / 医薬品 / 4つの壁 |
Outline of Annual Research Achievements |
食品業界と医薬品業界のミクロ定性分析から、以下4点のリサーチクエッションが導き出された。1)長期パターンと短期パターンの分水嶺は何か。2)文字通りの長期パターンと停滞期を含む長期パターンの相違点は何か。3)停滞を経た長期パターンの場合、なぜ停滞期を迎えその停滞を脱出できたのか。4)短期パターンと停滞期を除く短期パターンの共通点と相違点とは何か。 1)4つの後発の壁が高いほど長期パターンとなる。両業界では技術の壁は低く、技術力を持たない企業は後れて市場参入しないとの含意が導き出される。一方、食品業界に顕著なのはブランドの壁であり、消費者の壁が表裏一体となっていた。そして、オタフクソースの場合、販路が欠如し自ら開拓するため、停滞期後も長期となった。2)差別化商品が参入前か後かの違いであり、その典型が医薬品業界である。食品業界における風味調味料の味の素とオタフクソースの対照性から、停滞期を脱する差別化商品とともに、市場と販路の存在の有無も重要となる。3)停滞期が生じた要因とそれを脱した要因が、長短期を分かつ重要なポイントだった。新薬開発時期の違いが停滞期の有無をもたらした医薬品業界では、外部リソースの活用が重要となり、販売提携によって現実的にヒット商品を発売し、技術提携を出発点に自社の研究開発を軌道に乗せた。4)両パターンに共通するのが差別化商品の存在であるが、その前提としてのリソースの壁の低さ、とりわけ販路と技術導入を活用できる研究開発体制の存在が重要となる。そして、差別化商品が消費者ニーズを満たすかどうかの事前チェックが不可欠であり、食品の消費者調査や医薬品の臨床実験は短期逆転の成否を握った。また、近接分野に進出した多角化パターンも目立った結果、食品最大の後発の壁はトップブランドであり、医薬品最大の壁は豊富な臨床実験にもとづく効能範囲と安全性のバランスであった。
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