Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度においては以下の3点について研究を実施し, うち2本([1], [2]については査読付き学術誌への掲載が決定している. また論文[3]については, 日本ファイナンス学会第26回大会(2018/6/24)における研究発表が決定している. [1] 井出真吾, 竹原 均 (2017),「日本企業の技術競争力と財務戦略: デュポンシステムを用いた分析」,『経営財務研究』,37 (1-2), 28-43. [2] 井出真吾, 竹原 均 (2018),「コーポレート・イノベーションと利益の持続性: 純営業資産利益率予想モデルに基づく分析」, 『現代ディスクロージャー研究』(採録決定). [3] 井出真吾, 竹原 均 (2018),「商標権情報の価値関連性:株価と財務特性にブランドイメージが与える影響」, Working Paper. 上記の論文[1]においては, 企業の技術競争力が自己資本利益率に与える影響を, デュポンシステムを用いて分析した。実証の結果, 技術競争力と売上高利益率との間には正の相関が存在し, 一方でそうした強い技術競争力の企業は財務レバレッジの使用について抑制的であることが示された. また論文[2]では, 日本の製造業の技術競争力と会計利益の持続性の関係を, 純営業資産利益率予想モデルに基づいて検証し, 分析の結果, 技術競争力と利益の持続性との間に正の相関関係が存在することを示した. これは資本コストや収益性など他の条件が同一であれば, 技術競争力が利益の持続性を高めた結果として, 将来の残余利益現在価値が上昇し, それを市場が評価して株式価値が上昇する可能性を持つことを示唆している. 最後に[3]では, 企業が登録する商標権数, および商標権が営業利益に与える影響を考慮した数値化指標であるTK値を用いて, 商標権情報の価値関連性について検証した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究期間内に予定していた研究については, 特許情報, 商標権情報ともにほぼ予定通りに実施した. ただし英語により執筆した以下の論文2編 [4] Keiichi Kubota, Hitoshi Takehara (2018),"Firm-level innovation by Japanese family firms: Empirical analysis using multidimensional innovation measures" [5] Shingo Ide, S. Ghon Rhee, Hitoshi Takehara,"The heterogeneity of institutional ownership and innovation in Japanese firms". について, [4]は初回の改訂を終えて再審査中であること, また[5]については, 国際学会での研究発表後, 大幅な改訂中であり, これらの2論文を英文査読誌に掲載することが必要であると考える. また本研究課題において整備したデータ群の期間延長・再整備, 他の研究用データベースとの統合, その前提としての研究プラットフォームの再構築作業には若干の遅れが出ており, 将来の研究活動に向けてこれらの作業を早急に終了すべきであると考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
【現在までの進捗状況】でも述べているように, 次の研究課題に向けて必要となる, データ期間の延長・再構築, 研究プラットフォームの移行を早期に終了する必要が有り, これが研究期間の延長を申請した理由である. 現時点ではそうした作業と並行して, 本研究課題の延長線上に位置づけられる次の研究課題「非財務情報開示が株価発見・企業財務特性に与える効果の分析」に着手している.
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Causes of Carryover |
教務主任としての校務多忙により, 研究プラットフォームの移行, 実証分析用データベースの期間延長・再整備等の研究に付随する作業のための時間が確保できなかったため, 実証分析用のデスクトップPCの更新を次年度に先送りした. また商標権関係の研究について, 成果発表1件について2018年度開催の国際会議に延期した.
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