Outline of Annual Research Achievements |
研究期間での実績としては, [1]企業の保有する特許情報が企業価値に与える影響, [2]特許情報の会計利益, 株式リターンへの浸透過程, [3]日本企業の技術競争力と財務戦略, [4]特許情報と会計利益の持続性, [5]同族企業の技術開発・特許戦略, の5点について実証分析を実施し, その結果について国内外の学会において研究発表を行った. またこれら全5編の論文のすべてが, 投稿・審査を経て査読付学術誌に掲載されており, その点で当初予定した研究目的を十分に達成したものと判断される. 技術競争力が日本の製造業にとって長期的・持続的成長に繋がる重要なファクターであることについては否定する余地が無いものの, その一方で特許情報が企業の財務特性, 株価形成, 会計利益に与える影響はこれまでまったくと言ってよいほど実施されてこなかった. 本研究課題の出発点は, この重要な研究課題に対して計量分析アプローチを適用し, その結果に基づいて科学的な議論を行うことにあった. 本研究課題では, 特許情報を尺度として測定された技術競争力が企業価値(および株式価値)を高めること, そして将来の収益性と収益の持続性を高めることを明らかとした. さらには技術競争力の高い企業ほど, その財務リスクが低いことも示しており, 研究開発戦略が持続的成長に大きな影響を及ぼすことを示した. また株式所有構造と技術競争力の関係については, 日本の同族企業に焦点を当てて, 同族企業におけるイノベーションについても分析を行った. 最後に研究活動と並行して, 特許情報, 商標権情報, CSR情報等の非財務情報全般に関する研究用データベース群の整備を実施した. これらのデータベースは, 平成30年度に開始された研究代表者による新たな研究課題において利用され, コーポレート・イノベーションから, 非財務情報全般への研究領域の拡大と実証分析のさらなる深化へとつながるものである.
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