2018 Fiscal Year Research-status Report
| Project/Area Number |
15K03700
|
|---|
| Research Institution | Osaka University of Economics |
|---|
Principal Investigator |
江島 由裕 大阪経済大学, 経営学部, 教授 (00382359)
|
|---|
| Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
|
| Keywords | アントレプレナーシップ / 中小企業 / 企業家的志向性 / 戦略行動 |
|---|
| Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、中小企業の持続的成長の駆動力として、広く海外の学会で認知されている戦略姿勢の１形態である企業家的戦略志向性(EO: Entrepreneurial Strategic Orientation)の、マネジメント・プロセスの解明である。この目的を達成するために、初年度から平成30年度を通じて主に最先端のEO研究の動向を文献サーベイと学会等への参加を通じて把握するとともに、大規模郵送アンケート調査による中小企業のEOにかかわるデータ収集と収集したデータのＤＢ化と第一次分析を行いEOが機能する新たな先行条件や触媒条件の予備的なケース調査と検証を行ってきた。
過去３年間で積み重ねてきたEOメカニズムの調査結果を踏まえて、平成30年度には、一旦、これまでの発見事実や知見を整理し部分的に成果を発表するとともに、改めて研究課題へのアプローチを検討してきた。そのために、国内外の研究者との意見交換や中小企業経営者へのインタビュー調査や対話を引き続き実施し、EOが機能する諸条件やEOが持続的に諸機能を発揮できる環境条件について検討を加えてきた。
そこからメカニズムとして見えてきた点は、経営トップ（個人）ならびに組織としてとるリスク志向性と実践の成果に対する満足度の水準とのバランスがEOの先行条件になっている可能性が高いことである。同時に、理論的背景としては、制御焦点理論（Regulatory Focus Theory）と深くリンクしている可能性が高い点が示唆された。今後、こうした点から実証研究を実施することを通じて、EOの先行条件を深めていきたいと考えている。
|
| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成30年度の研究の主なねらいは２つあり、１つ目は、これまでの調査研究から得られた発見事実や知見を整理し、多角的な視点から研究課題にアプローチして研究全体の取りまとめをするとともに、今後の研究に向け焦点を絞った論点や課題を見つけることであった。２つ目は、これまでの調査分析結果に対して、国内外の最先端の議論を踏まえ、改めてこれまでの研究成果とアプローチに再検討を加え補完することであった。
１つ目の研究の狙いについては、一定程度、これまでの調査結果を体系的に整理して、発見事実の検討、対外発表、今後の研究課題の発見につながる議論や論点整理はできたと考える。EOの境界条件の論理の整理と実証分析からの具体的な変数やその関係性の整理、その背後にある複数の理論との関わりについての議論についてもフォローし論点も整理した。
２つ目の研究の狙いである、これまでの調査分析結果やそこからの発見事実や理論的かつ実践的知見に対する、異なる視点からの補完的アプローチであるが、その体系的な検討枠組みの検討と一定の構築は行ったが、研究者の家庭の事情から、国内外の研究者との意見交換や、枠組み検討のための企業経営者との対話等に十分時間を費やすことができず、この点については次年度に持越し実施することとした。焦ることなく、これまでの研究成果を適切に取りまとめる検討作業を次年度に着実に実行する予定である。
|
| Strategy for Future Research Activity |
平成３１年度は、これまでの本研究にかかわる調査や分析の結果を踏まえて、補完的かつ新たな研究アプローチによる多角的な視点からの分析と検討を行い、本研究テーマにかかわる理論的示唆と今後の研究課題の検討を行う計画である。具体的には、これまでの調査研究結果を再整理して、再度見直す中で、必要に応じて補足調査を実施しながら、EOメカニズム研究のとりまとめを行う予定である。また、EOの持続的な表出の先行条件の鍵を握る不確実性やリスク志向性に影響をあたえる諸要因に焦点を絞った検討を、最先端の国内外の議論を踏まえて可能限り行い、これまでの調査結果との比較分析を行う予定をしている。
検討に際しては、過去に実施した定量調査結果と定性調査結果から導出した仮説モデルを客観的に検証する形で検討を加えたいと考えている。また、これまでの調査研究結果をベースにそれらを発展させながら、国内外の学会やＥＯ研究者との意見交換を通じて、フィードバックを獲得しつつ、異なる分析アプローチによるＥＯメカニズムの解明の試行も可能な限り実施する予定である。
さらに、今年度が、本研究テーマの最終年となることを踏まえて、調査研究結果を体系的に整理し研究成果として広く社会に発表したいと考えている。同時に、ＥＯ研究成果から得た知見と新たな研究フロンティア（新たな研究課題やテーマ）を、世界的なアントレプレナーシップ研究潮流の中から改めて捉え直し、論点整理をし、国内外の学会において検討すべき研究課題として提起することも検討している。
|
| Causes of Carryover |
平成３０年度に想定していた、これまでの調査分析結果を補完する研究全体の検討作業が、その検討基準となる最先端の先行研究成果が多岐にわたり精読に時間がかかったことに加え、家庭の事情が重なり、不十分な全体のまとめになることを避けるため、必要な調査検討項目を次年度に持ち越し、結果、次年度の使用額が生じた。
平成３１年度では、引き続き、過年度の調査分析結果からのインサイトと理論的示唆を、国内外のＥＯ研究者との意見交換の実施と多岐にわたる最先端の関連研究成果の精読から紐解き、本研究の成果として全体のとりまとめを実施する予定である。
|
