2016 Fiscal Year Research-status Report
東南アジアにおける貧困脱却のためのステージモデル(SPIモデル)に関する研究
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15K03714
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Research Institution | Nakamura Gakuen College |
Principal Investigator |
山田 啓一 中村学園大学, 流通科学部, 教授 (80330885)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 貧困者の自立 / 発展段階モデル / 自力更生による内発的発展 / モチベーション / 貧困支援 / 支援機関(NGO・NPO) / ソーシャルビジネス / マイクロファイナンス |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は、4月~7月には文献調査および仮説とモデルの精緻化等の作業を行った。平成27年度の研究成果を踏まえ、貧困者の自立発展モデル(SPIモデル)をブラッシュアップした。まず、貧困者の生活実態を基準として、貧困者のレベル分け(極貧・避難者、下層貧困者、中間貧困者、上層貧困者、貧困脱却者)を行い、自立発展モデルと関連づけた。つぎに、支援機関の支援内容と支援方法を洗い出し、自立発展モデルの各ステージと関連づけた。また、貧困者のニーズとウォンツについては「モノ」から「コト」へのコンテクスト転換を踏まえ、同じ人間でも状況によってニーズとウォンツは変わるというコンティンジェンシー要因を考慮すると、ニーズとウォンツが多様化・複雑化することを考えると、支援の在り方も支援機関がすべてのニーズとウォンツをカバーするというサービスのオーダーメードよりも、支援機関のネットワークを通じたサービスの品揃および貧困者の選択の方が、より効果的かつ効率的ではないかと考えるに至った。そこで、生存の段階を除き、貧困者の自主的な選択を支援するマイクロファイナンスの有効性にも着目し、文献調査を行った。 現地調査は、フィリピンにおいてマニラ首都圏(8月)、セブ市(9月)にてそれぞれ実施した。現地調査の内容は、現地のNGOおよび日本人の運営するNPOおよび関連団体を訪問し、面接調査を実施するとともに、アテネオ・デ・マニラ大学(マニラ首都圏)およびサンカルロス大学(セブ市)にて研究者との面談を実施した。さらに、平成29年3月には、アテネオ・デ・マニラ大学にて研究者および学生を対象として本研究の特別講義を実施し、現地の関係者および学生との意見交換を行った。 このほか、中間段階における研究成果として原著論文(3本)、国際学会発表(3件)、および国内学会発表(5件)を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、従来開発経済学のアプローチで行われてきたマクロレベルでの貧困問題の解決に対して、支援を受ける側に立ったモチベーション、キャリア形成、起業、マーケティング等の経営学の視点からミクロレベルでの解決策を見出そうとする研究である。まず初めに、顧客志向という観点から貧困者のニーズ・ウォンツを明らかにし、それに適合する貧困者の支援を導出するために、貧困者の生活実態についての研究調査を実施した。次に、NGO/NPOの貧困支援の実態について現地の大学の研究者および関係者の協力を得ながら調査を行ってきた。 その結果、モチベーション理論に基づいた貧困者の自立発展段階モデルを構築し、支援機関の段階ごとの関与・支援のあり方について仮説を設定した。このモデルは、貧困者の段階を生存、社会参加、自立の3つのステージに分け、さらに社会参加と自立のステージをそれぞれ2つのサブステージに分けたモデルであり、ステージごとに貧困者の状況、ニーズ・ウォンツ、支援機関の支援のあり方、について明らかにした。 現地での貧困者との面接調査により、貧困者にもプライドや自由意志があり、貧困者の自己決定が大切であることを認識した。したがって生存レベルを除く上位レベルにおいては貧困者の自己決定を重視した「選択」を尊重した支援が有効であるという仮説を設定するに至った。このため、選択に必要な資金を自由に利用できるマイクロファイナンスが有効ではないかという仮説を引き出し、貧困者の自立という視点からマイクロファイナンスの研究にも踏み込んだ。 平成28年度の後半には、モチベーション理論を発展させ、キャリア形成に関する研究の必要性を発見するに至り、貧困者のモチベーション/キャリア形成と支援機関の支援のあり方についての理論の精緻化が必要となり、これらに関する文献調査を重点的に行い、仮説およびモデルの再設定作業を行っているところである。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は、これまでの文献調査および現地調査により明らかになった事項に基づき、仮説およびモデルの見直しおよび必要な修正を行い、平成29年8月後半~9月初旬にマニラ首都圏およびセブ市で実施する予定の現地調査(聞取調査、質問票調査)による検証を行う。現地調査にあたっては、アテネオ・デ・マニラ大学(マニラ首都圏)およびサンカルロス大学(セブ市)の研究者の協力を得て行うが、質問票調査については規模が大きくなるので、それぞれ有料にて実施することになる(事前に見積もりを依頼する)。 現地調査終了後、データを入力、集計、分析を行って、仮説の検証作業を実施する。データ入力については、データ量が多いことが予想されるため、学生アルバイトを依頼する。以上の作業を10月末までに終了し、11月から報告書作成を開始する。平成30年2月末を目途に報告書を完成させ、印刷・製本を行う。 また、研究成果を、国内外の学会で発表するとともに、原著論文として学会ジャーナルに投稿し、さらにできれば出版にこぎつけたい。
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[Presentation] 貧困者の自立とフェアトレード2016
Author(s)
山田 啓一
Organizer
山東省世界経済学会2016年国際学術検討会
Place of Presentation
青島大学、青島、中国
Year and Date
2016-08-18 – 2016-08-18
Int'l Joint Research
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