2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K03726
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
星野 裕志 九州大学, 経済学研究科(研究院), 教授 (60273752)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 港湾開発 / 貿易促進 / ハブ・アンド・スポーク / 国際物流 |
Outline of Annual Research Achievements |
2015年9月に、米国ジョージア州政府港湾局、サウスカロライナ州政府観光局を訪問し、パナマ運河拡張工事後の物流の変化についてヒアリングを行い、また米国三井物産のロジスティクス担当部長より、拡張後の商流と物流の変化に対する準備についてインタビューを行った。 同年11月には、パナマを訪問し、運河の拡張工事の状況を実地で確認すると共に、国内各所で多角的なヒアリングを行った。まず政府関係では、パナマ運河庁副長官より拡張工事後の変化、海事局担当部長よりパナマ国内の港湾開発の状況についての概要説明を受けた。次に、パナマのカリブ海岸に位置する港湾運営会社マンサニージョ・インターナショナルにおいて、パナマ国内の港湾の開発と将来計画についてヒアリングし、コンテナターミナルのユーザーである商船三井パナマ社長より、コンテナ運航船社の戦略について確認した。さらに、コロン・フリートレード・ゾーンが、運河拡張によりどのような影響を受けるかについて担当部長のヒアリングを行い、日本大使館商務官より想定される拡張後の国際経済への影響について、意見交換を行った。 昨年までの科研開始以前の準備段階でパナマで得た知見を基に、2015年4月17日に神戸大学で開催された日本海運経済学会関西部会において、「パナマ運河拡張による貿易及び国際物流への影響」の報告を行い、10月18日には日本大学で開催された日本海運経済学会年次大会で、これまでのヒアリングを踏まえて、LNG輸送が日本の海運企業に与えた影響-多国籍企業化の促進」のテーマで報告し、パネル・ディスカッションを行った。本報告内容は、「LNG輸送が日本の海運企業に与えた影響 -多国籍企業化の促進-」の同じタイトルで論文としてまとめ、同学会の学会誌『海運経済研究第49号』にも収録された。 以上のように、ほぼ当初の計画通りに、パナマと港湾局のヒアリングと基礎調査を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上述の通り、3カ年の研究期間の初年度に当たる2015年度は、研究対象であるパナマ運河の拡張工事に関する現状の把握をするべく、パナマの関係機関と米国においてヒアリングを行った。当初の研究計画で予定していたニューヨーク・ニュージャージー州港湾局とロサンゼルス港湾局へのヒアリングは、パナマ運河の拡張で直接的な影響を受けることが予想されるジョージア州政府港湾局とサウスカロライナ州政府港湾局へのヒアリングに変更したもののその他の研究は、ほぼ予定通りに進行している。 一方で、中南米貿易の現状を把握することを目的に、米国三菱商事、米国三井物産と米国住友商事へのヒアリングの依頼を行ったが協力が得られず、米国三井物産のみの訪問に留まった。また現状では、パナマ運河の工事完工を見据えた対応が、特に社内でされていないことがわかった。情報ソースの問題も有り、実際の中南米からの輸出品目と輸入品目のデータベース化を初年度に予定していたが、現時点で把握しきれていない。 パナマ訪問の際に、パナマ国内で活動をする米国の研究機関(ジョージア工科大学の研究所)へのアプローチの有用性についてアドバイスを受けたので、研究2年目のヒアリング対象に含める予定。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の焦点は、パナマ運河の拡張工事の完成で想定される国際貿易及び物流への影響であるが、研究視角として様々な捉え方ができる。特に何人かの研究者の実施している研究視角として、パナマ運河の拡張工事に関する工学的な研究の他、北米の複合輸送(インターモーダル・トランスポート)との競合関係、スエズ運河やその他の複合輸送との比較などが中心であるが、あくまでの当初の予定通りに、運河拡張とパナマ国内の港湾開発とパナマを中心とする自由貿易の枠組みとコンテナ船社の戦略の未組み合わせが、中南米を中心とする貿易の促進と国際物流の変化にどのように繋がるのかを中心に考察する。 今後は、実際にパナマの港湾を活用して中南米の運営を行うコンテナ船社の動向、パナマに大規模な拡張計画を有する港湾運営会社、中南米発着貨物の現状把握と今後の展開の可能性を中心に総合商社などにヒアリングを実施する予定。同時に、運河拡張工事の主体であるパナマ運河庁と海事局にも引き続き、ヒアリングを行う。 パナマ訪問で、米国のジョージア工科大学が現地に研究所を設けて、パナマ運河関連の研究を行っていることと、パナマ運河が結ぶ太平洋岸と大西洋岸のコンテナ輸送には、パナマ運河鉄道が少なからず影響力を有していることが判明したことから、今年度以降の調査では、これらの機関にもアプローチすることで、より具体的な動きについても探索する予定である。 研究を推進すると同時に、ヒアリングなどで得た知見を基に、研究成果を国際物流や国際経営の分野の学会や研究会で報告することで、関連の研究者と情報を共有し、アドバイスを受けることで、より最終的な研究成果を導出でけるように努力する。
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Causes of Carryover |
研究年度の初年度にあたる平成27年には、本研究の目的でパナマと米国への二度の海外出張を行ったが、その他の研究目的で米国ニューヨークに一ヶ月間の滞在中に、ニューヨーク発着で出張を行うことができたので、当初予想した支出を要しなかった。また、初年度は研究補助などのスタッフの雇用が発生しなかったので予定額を下回った。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究年度2年目に当たる平成28年には、昨年の研究結果を踏まえて、さらにパナマでのヒアリングを含めてリサーチを深めることを予定している。しかし、貴重な研究基金であり、出来る限り効率的な支出により、無駄な出費は控える予定。
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Research Products
(3 results)