2017 Fiscal Year Research-status Report
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15K03726
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
星野 裕志 九州大学, 経済学研究院, 教授 (60273752)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 国際物流の変化 / 国際トレード / 輸送システムの変革 / ハブ・アンド・スポークシステム |
Outline of Annual Research Achievements |
研究の3年目にあたる2017年は、2013年と2014年の予備調査、2015年11月と2016年11月の調査に続いて、8月20日より25日までパナマに出張し、パナマ運河拡張による国際貿易と国際物流に対する影響を多角的に調査する目的で、パナマ運河を管掌するパナマ運河庁の複数の管理者、現地の海運企業、コロンフリーゾーンを運営する機関、コンサルタント、日本大使館の経済担当者にインタビューを行った。 その結果、前年の2016年6月26日に、パナマ運河拡張工事が完工することで、当初予想されていたよりも大型のコンテナ船などの船舶やアジア向けに米国のシェールガスを輸送するLNGタンカーの通航が増加していることは明らかになった。一方で、多くの海運企業が大型船舶の建造を伴う航路計画の変更には時間を要することと、パナマ運河庁が予定していた太平洋岸でのコンテナターミナルの開発計画が、政治的な理由で棚上げされていることから、大きな拡張効果が生じるまでには時間を要することが判明したために、平成27年からの3カ年の研究計画の延長を申請すると共に、ここまでの中間報告をまとめて学会で報告を行った。 2017年10月に明治大学で開催された第24回国際ビジネス研究学会全国大会において、「パナマ運河拡張による中南米貿易の変化 -直接投資と貿易」として報告を行い、また同年10月に東京海洋大学越中島キャンパスで開催の日本海運経済学会第51回大会で、 「産業集積による競争と競合」として、パナマ運河拡張が及ぼす影響を報告し、国際経営及び海運研究の研究者とディスカッションを行った。また、日本海運集会所の発行する 『海運 N0.1077』(43-46ページ)で、「パナマ運河拡張から1年 -国際物流と国際トレードへの影響-」を掲載し、広く海運、物流分野の関係者に向けて、パナマ運河拡張の意義について提起した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初予定していた3カ年の研究計画の遅れには、ふたつの理由がある。 そのひとつは、当初2014年から2015年内の完工が予定されたパナマ運河の拡張工事が、2016年6月26日に遅れて終了し、また同時に推進されていたパナマ運河庁による太平洋岸でのコンテナターミナルの港湾開発が遅れているために、当初予想した運河の拡張工事と物流インフラストラクチャーの拡充による国際貿易及び国際物流への影響が、まだそれほど出ていないことがある。 次に、米国のトランプ大統領の就任により、チリ、メキシコ、ペルーなどが含まれるTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)の締結が棚上げされたことから、実施計画にあった中南米とその他地域との農作物や一次産品と製品輸送を中心とする輸出の動きといった中南米の貿易活性化が生じていない。 この研究では、パナマ運河を中心とする物流インフラストラクチャー拡充がパナマを中心とするハブ・アンド・スポークシステムの構築を促し、その結果として潜在的な可能性持っていた中南米からの輸出と、中南米を市場とする輸入の拡大に繋がることを意図しており、その両面からの停滞が、予期した結果をもたらしていないことがある。 延期された最終年度の平成30年度において、インフラストラクチャーの整備の加速と米国を除いたTPPの締結にまで至るかどうかは未定であるが、パナマ運河拡張の完工からの時間的な経過で、実際に通航する船舶の大型化が進行していることから、なんらかの影響が明らかになると考えられ、この点を研究を通じて結論に結びつけることを計画している。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の対象は、パナマ運河の拡張工事の完工で今後予想される国際貿易及び国際物流への影響であるが、前述の通り、物流インフラストラクチャーの整備とTPPを含む貿易協定の締結の遅れによって、パナマ運河の拡張効果が今の時点で十分に生じていないことがわかった。一方で、現地の実地調査と学会における研究報告における他の研究者とのディスカッションにより、他の輸送手段や輸送経路との競合関係、パナマ国内を中心とするロジスティクス・インフラストラクチャーと運河の組み合わせによるパナマのサービスクラスターによる地域拠点化、中南米域内の定期船航路のオペレーション形態とパナマ経由の基幹航路との関係など、本研究には様々な視点での考察と研究の拡張性が期待できることが明らかになった。 最終年度の研究を進めるにあたって、まずは2/3年目に必ずしも十分ではなかったその他地域との貿易に関する現状把握を行い、中南米からの具体的な一次産品および製品の輸出と、中南米向けの他地域からの輸入に関する調査について早急に着手する。さらに、パナマ運河拡張から現時点で、2年弱が経過しており、今後生じる大型船舶の投入による具体的な物流の変化について明らかにする。 昨年度のパナマの現地調査と米国国内の港湾調査は、在外研究で滞在中の米国ニューヨークから、現地に直接に出張したことから、時間的な制約があって十分なインタビューができなかった一方で、当初予定した金額の支出を大幅に節約できたことから、可能な限り最終的なヒアリングを目的に、平成30年度前半の現地調査を計画する。貴重な研究基金であり、効率的かつ効果的に出費を抑えながらも、研究と成果報告に支出を予定している。
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Causes of Carryover |
昨年度のパナマの現地調査と米国国内の港湾調査は、在外研究で滞在中の米国ニューヨークから、現地に直接に出張したことから、時間的な制約があって十分なインタビューができなかった一方で、当初予定した金額の支出を大幅に節約できたことから、可能な限り最終的なヒアリングを目的に、平成30年度前半の現地調査を計画する。貴重な研究基金であり、効率的かつ効果的に出費を抑えながらも、研究と成果報告に支出を予定している。 <使用計画> パナマの現地調査、学会報告および中南米の貿易に関するヒアリングおよび資料収集
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Research Products
(3 results)