2015 Fiscal Year Research-status Report
推論空間モデルに基づくeクチコミ文の態度変容効果仮説の検証
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15K03752
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
藤本 和則 近畿大学, 経営学部, 教授 (80424993)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | eクチコミ / 態度変容 / 比較表現 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、ソーシャルメディアの普及に伴って、ネット上のクチコミ(eクチコミと呼ぶ)への接触による態度変容効果の研究が精力的に行われている。研究代表者は、これまでに、メッセージの表現形式の違いから態度変容効果の大小を説明する「推論空間モデル」を構築した。推論空間モデルは、送り手の態度レベルを導くのに必要なエフォートの程度を「推論量」として数値化し、推論量の大小比較からメッセージ間の態度変容効果の差異を説明しようとするものである。本研究の目的は、推論空間モデルから導かれる未検証仮説を実験的に検証することにある。 今期は、eクチコミメッセージの態度変容効果について、最も基本的な研究課題に取り組んだ。具体的には「書き手の態度を明示するメッセージ(推論量小)は、明示しないメッセージ(推論量大)より態度変容効果が大きい」という仮説を構築し、質問紙調査による仮説検証を行った。調査の課題数や回答のサンプル数の点で、限定的な検証ではあったが、仮説が支持されることを確認した。匿名の書き手が情報発信するeクチコミでは、書き手がどの商品をどれくらい気に入っているかを明示するメッセージの方が、単に便益を述べるメッセージより態度変容効果が大きくなることを意味する。 これまでの広告効果研究では、推論の動機と知識がある読み手にとっては、推論量が大きいメッセージほど態度変容効果が大きいとされてきた。今回の検証では逆の結果、つまり、推論量が小さいメッセージほど態度変容効果が大きいという仮説が支持された。こうした効果の差異は、広告とeクチコミとでは読み手の行う推論が本質的に異なることを示唆する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.文献調査:Journal of Consumer Psychology, Journal of Consumer Researchに加え、Discourse Processes, International Journal of Cognitive Scienceも対象として文献調査を行った。 2.実験環境の設計と構築:E-Primeの実行環境を整備した。簡単な動作確認を終えたものの、実験コンテンツの作成完了には至らなかった。 3.学会発表:日本認知心理学会 ディスコース心理学研究部会にて研究発表を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
推論空間モデルによる態度変容予測/説明では、推論量が大きいメッセージと小さいメッセージのどちらがより大きな態度変容効果をもつのかを明らかにすることは極めて重要となる。平成28年度は、この研究課題について引き続き取り組み、結果を国際会議にて発表することを目指す。平成29年度は、平成27、28年度に得られた結果を踏まえて、推論空間モデルの未検証仮説の検証に取り組み、結果の論文化を目指す。
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Causes of Carryover |
実験環境の構築については、外注によるシステム構築を計画したが、情報収集の結果、市販品である心理実験用ソフトウェアE-Primeを利用したシステム構築に変更を行った。このため、経費が削減された。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度は、国際会議での発表を予定することから、外国旅費としての使用を計画する。
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Research Products
(2 results)