2015 Fiscal Year Research-status Report
会計基準のリスク志向性モデルの構築:設定主体のリスク志向性に関する実証的研究
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15K03759
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
久保 淳司 北海道大学, 経済学研究科(研究院), 准教授 (70322790)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | リストラクチャリングに / 非金融負債 / 将来支出 / SFAS5型 / SFAS143型 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は,会計基準設定主体のリスク志向性が会計基準に及ぼす影響を探るために,主として,リストラクチャリングに関するアメリカ会計基準およびその設定過程を詳細に分析した。 この結果,アメリカの会計基準設定主体である財務会計基準審議会(Financial Accounting Standards Board, FASB)が,リストラクチャリングに関する会計処理において「新たに約束を締結すること」を重要視していることが明らかになった。これは,会計処理において,会計主体の能動性を重視していることと同義であることから,リストラクチャリングに関する会計基準が属する「SFAS143型の会計処理」が能動的な将来支出を対象とする会計処理方法であることを特定できた。 これまでの研究において,もう一方の「SFAS5型の会計処理」が受動的な将来支出に適合的な会計処理方法であることが明らかになっていることから,本年度の研究により,FASBが能動的な将来支出と受動的な将来支出とを峻別していることが明らかになったことになる。FASBのリスク志向性の把握において重要な事実の発見に位置づけられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では,会計基準設定主体として企業会計基準委員会(ASBJ),国際会計基準理事会(International Accounting Standards Board, IASB)およびFASBを対象としている。本年度の研究によって,FASBのリスク志向性の把握の重要な鍵概念(能動性と受動性)が明らかになったことから,ASBJとIASBのリスク志向性を把握する基礎が得られたことになる。また,具体的な概念の析出ができたため,今後のモデル構築において利用可能な操作的な概念への転換も容易に行えるものと考えられる。 これら実際に得られた研究成果と,今後の進展の基礎となる概念を得られたことから,4年間の研究計画の1年目の進捗として,おおむね順調に進展しているものと判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究によって,FASBのリスク志向性の把握のための基礎が得られたことから,その手法を敷衍して,ASBJおよびIASBのリスク志向性の把握を試みる。その上で,3会計基準設定主体の比較分析を行い,会計基準設定主体のリスク志向性の一般化できる部分と,各会計基準設定主体の固有のリスク志向性との峻別を試みる。 これらの研究では,会計基準の具体的な内容の分析に加えて,基準設定過程に遡った分析を行うため,本研究の直接的な目的の達成のみならず,会計基準設定への派生的な貢献も目指す予定である。
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Causes of Carryover |
次年度使用額の大部分は,研究成果の発表に関連する支出(プリンターの購入,英文校正費用など)を年度末間際に行ったために,会計処理が間に合わなかったために発生したものである。 次年度使用額の残額は,洋書購入の支出金額が確定しなかったために生じたものである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額の大部分は年度末までに支出済みである。残額については,書籍を1冊購入するための費用に充てる予定である。
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Research Products
(3 results)