2015 Fiscal Year Research-status Report
わが国企業における業績測定システムを中心としたコントロールの実践効果に関する研究
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15K03762
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Research Institution | Otaru University of Commerce |
Principal Investigator |
乙政 佐吉 小樽商科大学, 商学部, 教授 (20379514)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 業績測定システム / マネジメント・コントロール / 医療バランスト・スコアカード |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、わが国企業を対象として、業績測定システムを中心としつつ、さまざまなマネジメント・コントロールの下で、①非財務指標と財務指標との関係をどのようにマネジメントしているのか、②非財務指標と財務指標との関係のマネジメントがどのようにして成果に結びつくのか、の2点を実証的に明らかにすることを目的としている。初年度である本年度は、先行研究のレビューを通じた理論的枠組みおよび仮説命題の精緻化を研究活動の中心とした。また、病院を対象に事例研究も行っている。 研究実績としては、「医療バランスト・スコアカードの導入プロセスに関する研究―済生会小樽病院の事例を通じて―」、および、「医療バランスト・スコアカードの導入プロセスに関する研究―医師のマネジメントを考慮して―」の二編を執筆している。 病院におけるバランスト・スコアカード(Balanced Scorecard、以下BSC)導入事例の大半はBSC導入初期段階について記述されている。また、先行研究において、医師をどのようにしてマネジメントしているのか、あるいは、医師がどのようにしてマネジメントに参画しているのかについてはほとんど記述されていない。それゆえ、上記論文では、済生会小樽病院の事例を通じて、長期間にわたるBSC導入プロセス、および、医師のマネジメントについて考察した。 考察の結果として、まず、広義のBSC導入プロセスの観点からみれば、BSC実践に伴う人材育成がBSC導入プロセスの促進要因となっていることを明らかにした。次に、同病院では、広義のBSC導入プロセスにおいて、BSCの精度向上(技術的要因の整備、管理体制の構築、戦略の明確化)を図りながら、増収を達成していることを得た。最後に、BSCの導入・実践のみから医師の経営へのコミットメントを引き出せるわけではないことを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、わが国企業を対象として、業績測定システムを中心としつつ、さまざまなマネジメント・コントロールの下で、①非財務指標と財務指標との関係をどのようにマネジメントしているのか、②非財務指標と財務指標との関係のマネジメントがどのようにして成果に結びつくのか、の2点を実証的に明らかにすることを目的としている。 初年度である本年度は、先行研究のレビューを通じた理論的枠組みおよび仮説命題の精緻化を研究活動の中心とした。特に重要となる、戦略的業績測定システムを中心としたマネジメント・コントロールをいかに操作化するかに関して先行研究のレビューを網羅的に実施している。 また、次年度からの本格的な事例研究の展開に備えて、調査企業の選定も行った。調査企業の選定に際しては、次の5つの手順を踏むこととしている。①顧客満足、品質、従業員満足のような非財務指標の向上に積極的に取り組んでいる企業に関する公表資料(2次資料)を収集する。②業績測定システムを中心としたマネジメント・コントロールに関する、公表資料に基づいた対象企業の事例を記述する。③記述した事例を小樽商科大学のディスカッションペーパーシリーズにて公表する。④記述した事例から調査すべき質問項目を導き出す。⑤対象企業にインタビュー調査の依頼を行う。 調査企業の選定にあたって、営利企業ではないものの、病院を対象として事例研究を行った上で、論文を執筆している。 以上から、次年度以降の研究を進める上で、本年度はおおむね順調に研究が進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、本研究の目的を達成するために、方法論的トライアンギュレーションを実行することを計画している。基本的な流れとして、第1年度は、理論的枠組みおよび仮説命題の精緻化を研究活動の中心としつつ、事例研究を展開するための下準備を行う。第2年度では、事例研究を本格的に展開することを通じて、理論的枠組みおよび仮説命題の精緻化を進める。また、事例研究を実施しながら、必要なデータが質量ともに収集できたと判断した時点で、質問票の作成・発送を実行する。最終年度においては、前年度から引き続いて、仮説命題について、内的妥当性を確保しながら統計的な検証を実施する。 本年度はおおむね研究が進展しているとはいえ、方法論的トライアンギュレーションを実行するためには、出発点となる、理論的枠組みおよび仮説命題の精緻化をさらに進めていく必要がある。したがって、まずは次年度も継続的に先行研究のレビューを実施する。 次に、調査対象企業の選定を継続しながら、本年度に選定した調査対象企業も含めて、積極的に事例研究を行う。最後に、先行研究のレビューおよび事例研究から得たデータをもとにして、質問票調査を実施するための準備を進める。
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Research Products
(4 results)