2017 Fiscal Year Research-status Report
海外地域統括会社に関するグローバルな事業評価システムの実証研究
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15K03765
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
溝口 周二 横浜国立大学, 大学院国際社会科学研究院, 名誉教授 (30200033)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 地域統括会社 / 業績評価システム / 業績評価基準 / マネジメントコントロール・システム / 情報システム / ケーススタディ |
Outline of Annual Research Achievements |
近年のアジア地域に立地する海外子会社は、グループ企業及び他企業との事業連携等を通じ、広範囲にわたって事業展開を実施している。本社事業部とこれに属する海外子会社間での直接的な事業評価システムが適用されるのではなく、本社がアジア諸国の経済発展状況、為替変動、振替価格設定、会計制度などの経済的諸条件を調整するため、アジア地域での企業グループ全体を統括する地域統括会社を設立し、企業グループ全体の業績評価を効率的に実施する傾向にある。 本社及び事業部と海外子会社間のマネジメント・コントロールのメカニズムについては著者による過去の研究から(1)業績評価システム及び人事管理システムの根幹は会計情報システムを中心とした情報システムに依存していること、(2)特に海外子会社及び地域統括会社における業績評価基準及び業績評価システムは統括する海外子会社の地域特性、組織特性に対応して弾力的に運用されていること、(3)供給連鎖を基軸に東南アジア地域では他企業とのアライアンスが広範囲にわたると個別の海外子会社に対する業績評価システムに代わり地域全体絵お統括する業績評価システムの必要性が認識された。 海外地域統括会社の実践的形態は、経営資源配分機能を持つアジア本社に近い形態から、生産または販売機能に特化する形態まで多種多様である。海外地域統括会社の機能を実態に合わせて分類し、本社-海外地域統括会社-海外子会社間のマネジメント・コントロールのメカニズム及びこれに強く影響する情報システムについて、平成29年度はNTTホールディング株式会社におけるNTTコミュニケーションズ社を中心に海外子会社の業績評価システム及びそれを支える情報システムについてのインデプス・インタビューを実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
NTTコミュニケーションズ社は全世界41ヶ国/地域、112都市にグローバル拠点を設置し、190ヶ国/地域以上にサービス提供を行っている(2017年8月時点)。これらのグローバル拠点はリージョン・ヘッドと呼ばれるアメリカ、ヨーロッパ、シンガポール、中国、香港などが国、地域、都市を管轄している。このマネジメントは海外営業のグローバル事業推進部が実施している。 NTTコミュニケーションズ社の業績評価システムは国内外を問わずに「ビジョン2020」に定められている。この戦略の基本は(1)情報化投資の計画策定プロセスを刷新すること、(2)各事業部長レベルで全社的な戦略的情報システム投資に関する業績評価の合意形メカニズムを機能させる、(3)情報化システム投資の投資効果などの業績評価指標を検証することであった。 このような情報化投資に関する業績評価指標の考え方として以下の分類が決定された。(1)戦略タイプ:事業変革に向けて組織横断的に取り組む全社的な戦略テーマである。具体的には抜本的なBPR変革と同期して実施する業績評価及び情報システム開発、グローバル・シームレス・差0ビスを支える戦略的な業績評価及び情報システム開発などである。(2)価値タイプ:業績評価指標としてROIを参照しながら設備投資、情報化投資に関する優先順位、ウエイト付けを実施する。(3)強制タイプ:早急に対応を迫られる義務的業務であり、効率性を重視する業績評価指標が使用される。例えば、制度及び法律などの変更に関する対応である。
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Strategy for Future Research Activity |
NTTコミュニケーションズの本社レベルに関するインタビュー結果を踏まえて、経営戦略、事業評価及び情報システムに関するグローバルな適合性について、(1)財務部門:当該企業、海外子会社及び海外地域統括会社に適用されている事業評価システムについての現状と組織特性の関連性、今後の事業評価の方針についてインタビューする。(2)関連会社管理部門:本社、海外子会社及び海外地域統括会社をリンクする事業評価システムの効果性の検討を行う。全般的な事業評価システムの管理運営のあり方と予算制度その他財務的管理システムとの結合の度合いについてインタビューを行う。 海外地域統括会社との比較検討、調査結果のまとめ及び報告書の作成を行う。上記調査が完了したあと、調査結果のとりまとめを行う。別途実施されている仏企業における海外地域統括会社におけるマネジメント・コントロ-ル・システムとの相違、その原因と特徴などについて評価し、研究結果とその課題及び制約を導出する。 結論は次の通りである。海外地域統括会社は全社的な事業評価システム及び海外子会社間の利害調整を行い、スムースでグローバルな管理を導入することができる。しかし、地域統括会社のパワーが増大すると本社と地域統括会社間の連結性は薄れ、地域統括会社の独立性が高くなり、本社におけるグローバル戦略の遂行が困難となる。仏企業の本社は地理的にアジアとは遠く、地域統括会社の権限がよりいっそう強くなる傾向がある。
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Causes of Carryover |
2016年度にEUROーASIE学会が釜山で開催され、海外渡航費が予算より少なくなったために次年度使用額が0より大きくなった。今年はEURO-ASIE学会が関西学院大学で開催されるためにこの予算を使うことを計画している。
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