2015 Fiscal Year Research-status Report
ガバナンス・コントロールの可能性:競争力・価値創造・持続性のパラドックスの緩和
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15K03774
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
大下 丈平 九州大学, 経済学研究科(研究院), 教授 (60152112)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ガバナンス / コントロール / パラドックス / 管理会計 / フランス |
Outline of Annual Research Achievements |
まず、研究代表者は研究題目「ガバナンス・コントロールの可能性」に沿って、国内では9月に管理会計変化論の意義に関して日本会計研究学会で自由論題報告を行い、海外では6月にフランス・ディジョン市のブルゴーニュ大学で開催されたリサーチワークショップで、現在までに得られたガバナンス・コントロール論の研究成果を発表した。同時に、同大学の大学院生約50名に対して、日本のマネジメント・コントロールに関して約5時間の講義を行った。こうした一連の研究報告と講義を通した様々な場での意見交換により、研究題目に関する研究成果をあげることができた。また特筆されるべきことは、フランスの実務家の団体であるDFCG(財務担当役員やマネジメント・コントローラー達の全国組織)でのシンポジウムのパネラーに招請され、ブルゴーニュ地域での研究者、実務家と日中仏の間に見られるマネジメント・コントロールの諸問題を議論することができた(参加者約80名)。もっとも、残念なことに、そうした内外での活動の成果を実績として平成27年度内に論考にまとめることができなかった。しかし、すでにその成果の一部は学内誌『経済学研究』(九州大学経済学会)に「「管理会計イノべーションの普及」とは何か」として入稿しており、掲載も決定している。そこでは英国の管理会計変化論はパラドックスを理論化しようとしている点を明らかにし、それが、フランス・コントロール論においてパラドックス概念が分析枠組みの基軸に据えられている点と類似性を持つことの意味を闡明しようとした。そして、その結論の意味するところは、本研究が課題とするガバナンス・コントロールの可能性がより確かなものになりつつあるという大きな歴史的な流れを確認したことであった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記の実績概要欄にも書いたが、研究代表者は「ガバナンス・コントロールの可能性」といった研究題目に沿って、国内外で一連の研究報告と講義を行ってきた。そうした種々の活動を通して、(学生・院生を含め)様々な方々からヒアリングを行うことができたし、有益な意見交換を行うことができた。この面では想定以上の成果を上げることができたと思われる。というのは、今年度においては、通常では考えられないほどの多くの経験を積むことができたと思われるからである。そうした意味では、研究題目に関する研究成果は計画以上に着実に上がっていると判断される。なかでも、上述したDFCG(仏財務担当役員やマネジメント・コントローラー達の全国組織)でのシンポジウムでブルゴーニュ地域での研究者や実務家とマネジメント・コントロールの諸問題について議論できたことは、私の研究課題にとって、決定的に重要な事柄となった。しかし残念ながら、計画以上の進捗と判断できないのは、そうした内外での活動の成果を実績として平成27年度内に論考にまとめることができなかったからである。とはいえ、実質的には十分な成果を上げているのであり、すでにその一部は学内誌『経済学研究』に投稿し、掲載が決定していることは上述した。以上のことから、研究はおおむね順調に進展していると判断した。こうした進捗状況からみて、今後残りの3年間の研究の推進方策は、予定通りに進めることができると確信している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は意図しない形で、海外での調査・分析に多くの時間を取られてしまったが、平成28年度は主として日本企業の調査・分析を行う予定である。 まず、日本企業に関しては、トヨタ自動車の今井範行氏との間で、研究代表者の提案するガバナンス・コントロールの枠組みを基礎に、トヨタにおけるガバナンスとコントロールとの間の関わりについて議論をすすめる予定である。今井氏によれば、多くの日本企業の場合、①法的監査(会計監査)、②ガバナンス、③内部統制(設計)、④監査、⑤コントロール、⑥IR(インベスター・リレ ーションズ)の各機能の主管部署が組織的に分散しており、有機的な統合化がうまく図られておらず、 ②を除いてすべて、並列関係にある別の独立した組織(本部)の帰属となっているという。トヨタにおいても内部統制の制度化を契機に、ガバナンスとコントロールの有機的なフィードバック・プロセスを回す役割(機能)を新たに経営組織体の中に構築する必要があると思われるという。したがって、本年度は本課題に関して、今井氏を通してトヨタ自動車の経営管理から多くを学ぶ予定である。 さらに、九州の地場の2~3の中小企業においても、ガバナンスとコントロールの有機的なフィードバックプロセスを回す役割(機能)を新たに経営組織体の中に構築する必要性を語る管理者と議論を行う予定である。一つの試みとして、私が提案するガバナンス・コントロールの仕組みを関いてもらった中小企業の経営企画担当の管理者に、中小企業では伝統的なマネジメント・コントロールの採用よりも、ガバナンス・コントロールの発想・理念の方が適切な場合があることを提示していきたい。具体的には、例えば福岡市で給排水設備業・空調設備などを営むシナノ設備㈱などとの共同研究を進め、研究期間内には一つの成果を出していきたいと考えている。
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Research Products
(3 results)