2017 Fiscal Year Research-status Report
のれんの有用性に関する実証研究~日米欧比較を通じて~
Project/Area Number |
15K03776
|
Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
上野 雄史 静岡県立大学, 経営情報学部, 准教授 (40405147)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | M&A / 基準値 / 財務リスク / 金融規制 |
Outline of Annual Research Achievements |
2017年度においては、M&Aの中でも、やや特殊な金融機関のM&Aについて検証していくための準備を行った。一般事業会社との比較は困難であるものの、金融機関の合併は金融システム、すなわち経済システムに与える影響も大きく、この点を踏まえた上でM&Aの研究を行う必要があると考えた。 M&Aの実態について、生命保険業を中心としたケーススタディにより明らかにした。直近では、我が国の生命保険会社が海外事業展開を拡大する際の手段としてM&Aを盛んに行うようになってきた。M&Aの財務リスクをコントロールするためにはM&Aを成功に導いていく必要があり、そのためには組織を統合するプロセスに慎重な対応が求められることを過去のケースに基づき明らかにした。 また金融機関はよく知られているように、ソルベンシー規制、バーゼル規制などの国際的に準拠しなければならない基準値がある。こうした基準値が企業経営の意思決定にも少なからず影響をもたらしていると考えられる。例えば、国内における損害保険会社、銀行において一時期合併が相次いだのは、資本規制に対応する意味合いもあったと推察される。この研究の成果としては、金融規制の基準値(資本規制)の水準が、金融機関が受け入れ可能な形で設定されていることが多く、その水準について明確な説明がなされていないことが多いことを明らかにした。金融機関の健全性の妥当性については定量的な手段だけでなく、定性的な情報も重要になっており、自己評価に関する報告書(ORSAレポート)や、金融機関が自らリスク選好および許容量を決めるリスクアペタイトフレームワークなどが金融規制の潮流となりつつある。こうした流れの中で、金融機関がどのように説明責任を果たしていくかが問われる時代になりつつある。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今回の研究では金融機関のM&Aの詳細分析にまで至らなかった。また欧米との具体的な数値データとの比較ができなかった点で、遅れている。
|
Strategy for Future Research Activity |
ケース分析を進め、成果を取りまとめていく予定である。M&Aは、成長の機会であるとともに、失敗のリスクも大きい。企業会計上で表される「のれん」が企業経営の何を表しているのか、そしてどんな会計的な政策の傾向がみられるかを、個々のケースを通じて詳細に検証していきたい。
|
Causes of Carryover |
今年度において予定されていた海外出張、報告が出来なかったためその額が余った。今年度においては、海外における調査も計画しているため、遅滞なく予算を使用する予定である。
|
Research Products
(3 results)