2018 Fiscal Year Annual Research Report
Empirical research on relevance of goodwill: Comparison of Japanese, European and U.S.
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15K03776
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
上野 雄史 静岡県立大学, 経営情報学部, 准教授 (40405147)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | IFRS / のれん / 減損 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度においては、これまでの成果を集約した形で最終的な報告書を取りまとめる段階であった。のれんの会計処理を巡る状況を調査し、その上でケース分析を通じて企業の実態を調査した。その結果を要約すると、 (1)海外の大手企業(GE)において、巨額の「のれん」減損が発生するなど、のれんの巨額減損のケースが欧米において目立ち始めた。 (2)一方で、日本のIFRS適用企業において今のところ、大幅なのれん減損は確認されていない。 日本のIFRS適用企業の多くの企業は、企業価値(株価ベースでの)を伸ばすことに苦戦しており、M&A(企業結合)による成果を出せていないのではないか、減損の先送りをしているのではないか、という疑問が残る。 こうした状況の中、2018年にIASBがのれんの会計処理の見直し(定期償却を行う方向に舵を切る)という事を印象付ける報道がなされたが、現在のところ、のれんを定期償却を行うという方向性にはなく、この点については、日本の報道各社のミスリィーディングといえる。 のれんの減損タイミングについての問題は、「企業内の内部統制(ガバナンス)の問題」「監査の問題」「会計基準の問題」に集約される。この問題のアプローチの仕方として、内部統制の問題である、もしくは監査の問題である、と考え、減損の厳格化を求める方向性に既にあると考えられる。とするならば、今後、問われるのは、内部統制上の問題(「のれん」関連情報のディスクロージャーのあり方を含む)、監査の問題、さらに監査人と監督官庁(日本でいえば、金融庁、アメリカで言えばSEC)の対応が問われることになってくるであろう。少なくともこの数年以内に、のれんの定期償却が行われる、という状況にはなりえないと考えられる。積みあがってくるのれんへの対応について、日本のIFRS適用企業は、なぜ減損しないのか、という事について適正な説明が必要になる。
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