2017 Fiscal Year Research-status Report
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15K03780
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Research Institution | Prefectural University of Kumamoto |
Principal Investigator |
森 美智代 熊本県立大学, 総合管理学部, 教授 (50220025)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
河谷 はるみ 九州看護福祉大学, 看護福祉学部, 准教授 (90399767) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 医療経営改善 / 医療経営分析 / 地域医療構想 / 民営化 / 社会法典 / 医療の質 / 医療法 / 地域支援病院 |
Outline of Annual Research Achievements |
我が国の少子高齢化という人口動態は医療費の増大をもたらし、各自治体の財政負担の原因となっている。総務省は、2007年旧公立病院改革ガイドライン、2015年新ガイドラインを公表して、各自治体の財政健全化を基盤とした公立病院改革を行っている。将来、公立病院が地域医療・介護・福祉の課題をどのように解決すべきかが重要な課題となる。 本年度の研究は、一つには公立病院が自治体からの補助金なしに、総務省が設定した経営改善のための目標数値を達成することができるかどうかの現状を探究した。総務省は、新旧ガイドラインによって、公立病院の組織見直し、経営改善のための目標指標設定による経営改善を実施しているが、多くの公立病院は会計負担金及び一般会計からの繰出金なしには経営目標指標を達成できない状況である。その理由として公立病院は効率化だけの医療経営に向かうことなく、へき地医療、周産期医療等を始め不採算性の医療に努めることが求められているからである。その理由の背景にある各自治体における地方公営企業の法適用と会計システムの関係を基礎として、中小規模の多い公立病医院が独立採算の原則と経費負担の原則を基盤とした運営、さらには平成27年企業会計基準の適用後の公立病院の運営状況について分析した。 また二つには、各地域の高齢化社会が加速するなかで、公立・公的及び民間医療機関における地域医療構想がどのように機能していくかである。地域では、地域医療構想、在宅医療及び介護を含めた地域包括ケアー等が、「日本型『医療・福祉・介護』の連携形態」として始まったばかりである。しかし、医療・リハビリ・福祉・介護等が一つの医療機関のネットワークで運営されているドイツの公的医療機関とは大きく異なるところである。 本研究では、①財政再建を基盤とした日独の医療改革における会計の役割、②我が国の医療・福祉及び介護の連携の可能性を探究した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
日独医療改革の研究を実施するに当たり、熊本県内の公立病院の経営改善の経営分析の資料が、熊本市民病院、荒尾市民病院、こころの医療センター等の運営検討委員会の一員として、内部資料を収集でき、また現場の医療関係者からのインタビューが可能な環境にある。本研究にきわめて有益な成果を得ることができる。 ドイツ及びスイスの医療関係者の協力を得て、聞き取りには、当初予想したよりも貴重な情報を得ることができる。 ドイツの医療現場と研究協力者から日本の医療機関とは異なる現状について、現場の調査が可能となったことは、本研究にとって成果報告に期待できる。 ドイツの公立病院も含め、医療機関のグループが、医療及び福祉・介護の連携による会計が連結決算書による医療機関の全体の医療経営の実情を把握することができる会計によって全体的な医療経営の実情を把握することができるという長所と個別の医療機関における経営状況を把握するためには電子官報をとおして経営状況を把握する必要があることなど、ドイツの医療及び福祉・介護の連携には、会計上の課題と効果を明確にするする必要が生じたこと、さらに医療機関の合併が増加していることなど、医療経営における組織再編によって生じる会計制度の変更などによって、当初の研究では明らかにならなかったことが課題となってきた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、日独医療改革のなかで、国民皆保険制度をとる我が国とドイツは共通の制度の下にある。その他、地方分権化と16州の統治、国と各地域の政策と制度の比較、会計制度に企業会計を導入した改革、他方、医療・介護における制度、「医療の質」の監督体制等の相違点の比較から、本研究を最終的な結論に向けて進めていく計画である。 我が国の各自治体における公立病院改革の現状と経営改善と「医療質向上への政策」の現状を調査分析し、財政健全化と地方公営企業の中での病院事業の経営改善が、どのような医療政策が策定され、実施されているのか、についてマクロ的観点とミクロ的観点から分析する。 他方、ドイツの財政は我が国と異なり、黒字化しているなかで、各16州の医療機関の経営改善がどのような医療政策と財政改善の関係で実施されているのか、に焦点をあてて、特に医療の質の法的な規制に重点を置き、我が国の「医療の質」に対する法的規制がない点における相違点に、今後の我が国の公立病院改革のなかで、「医療の質向上」の規制にどのような方向性が必要となるかに最終的な研究をまとめる。
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Causes of Carryover |
2017年度の「日独医療改革における調査のための予算」が、一つには、「シュマーレンバッハ経営経済学会」で、ドイツ共同研究者との討論ができるようなプログラムが学会で実施されなかったために、学会での討論のために生じる経費の支払いがなかった。もう一つは、ドイツヘリオスの医師がスイスヘリオス医療機関に転勤となったことから、ドイツヘリオス医療機関で共同研究が実施されなかったことである。 以上の2つの理由から、当初予定した予算を使用しなかった。したがって2018年に研究費の繰り越しを申請して、2018年度にシューマレンバッハ経営経済学会での共同研究者との「16州における医療政策と医療改革の状況」を統計資料と現地での聞き取り、さらに学会での質疑応答によって最終研究成果を整理してまとめる計画である。特にドイツの「医療の質」についての評価基準と評価組織は、我が国の「医療の質」における評価基準の構築には有益な情報を提供してくれると考える。
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