2016 Fiscal Year Research-status Report
3組織間取引モデルに基づいた価値創出プロセスに関する理論的・実証的研究
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15K03782
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
高橋 邦丸 青山学院大学, 経営学部, 教授 (10276016)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 企業間取引 / コスト構造 / 需要不確実性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,主要顧客との関係を重視する企業間取引において,外部環境の不確実性が企業のコスト・ビヘイビアやコスト構造に与える影響について,主としてBanker et al. (2014)の研究に依拠して考察するとともに公表財務データを用いた実証研究を試みている。原価計算における基礎的な問題の一つであるコスト・ビヘイビアに関する研究領域では,コストの下方硬直性に関して、公表財務データを用いた実証研究が盛んに行われている。しかしながら,外部環境の不確実性が主要顧客との関係を重視する企業間取引や企業のコスト構造にどのような影響を及ぼしているかについてそれほど多くの実証研究が行われているわけではない。そこで本研究では,不確実性がコスト構造にどのような影響を与えるかを考察した先行研究を概観するとともに,日本の製造業に属する企業のデータを用いて実証分析を行った。具体的には,需要の予測が比較的容易である状況下では,企業間取引を円滑に行うための固定的な資源に投資することによって、変動費を低く抑える傾向が見られるのかや、販管費の詳細項目に関する分析を行った。分析の結果,需要の不確実性がコスト構造に与える影響については販売費および一般管理費,売上原価,および従業員数のすべてのコスト分類において,需要の不確実性が高くなると,短期的には固定費の割合はより大きく変動費の割合はより小さいといった硬直的なコスト構造となることが明らかとなった。また需要の不確実性とコスト硬直性の関係については,販管費の詳細項目についても同様の結果が得られた。 また日本企業における企業間取引に関するデータベースの構築を昨年度に引き続き行うとともに、部分的にではあるが売り手企業および買い手企業双方の立場からの取引の集約度、取引の継続期間、株式持ち合いが企業の収益性やコスト構造に及ぼす影響について分析を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
企業間取引に影響を及ぼす主要因である需要の不確実性問題に関して、日本企業のデータを用いた実証分析を行うとともに、その成果を国際学会にて報告するとともに、論文として公表することができた。 また3社間取引に関するデータベースを製造業に限定してではあるが完成させることができ、部分的にではあるがパイロットテストを行うこともできているため。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)3組織間の取引に関するデータベースに基づいて、サプライヤー、売り手および買い手の取引関連行動に関する実証分析を行う。具体的な調査項目としては、サプライヤーが提供する製品の特長(耐久消費財を製造しているかや差別化可能な製品を開発しているかなど)、サプライヤーとバイヤーとの関係性、バイヤーが所属する産業の特徴が取引企業の業績に与える影響について実証分析を行う予定である。 (2)財政破たんや自然災害等外部環境の激変が企業業績に影響を及ぼすことは知られているものの、その際に主要顧客との関係を重視する企業間取引を行っている企業に対してどのような影響を及ぼすのか、具体的には取引関係の有無や親密度と業績の改善の程度やスピードとの関係についてイベントスタディを試みる予定である。
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Causes of Carryover |
2016年6月にイタリアのフィレンツェで開催されたIABE-2016 ITALY - Summer Conferenceに出張予定であったが校務で参加できなかったことにより出張旅費が未消化となったため
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
国際学会への報告及び参加(アメリカ会計学会年次大会等)を増やすことにより、2016年度の出張旅費を消化する予定である
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