2016 Fiscal Year Research-status Report
臨床的知識に基づくマネジメント・コントロール会計の理論化:アクションリサーチ
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15K03797
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
堀井 悟志 立命館大学, 経営学部, 教授 (50387867)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 管理会計 / アクションリサーチ / 常識的知識 / 定性的管理会計研究 / 業績管理会計 / 工程別損益計算 / 情報システム |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は,前年度に引き続き,徹底的なアクションリサーチを行うとともに,その基礎としての研究方法論に関する検討を行った。 まず,アクションリサーチとしては,あるグローバル企業(東証一部上場)における業績管理会計制度や,非上場の自動車部品製造会社における新たな業績管理会計制度(工程別損益計算)の導入や中期経営計画制度改革そして原価計算制度改革を推し進めるとともに,KPIの設定を含む情報システムが組織において意味をもつプロセスに関する検討を行った。これらの研究活動を通じて,具体的には以下の検討を行った。 1.業績管理会計制度改革:ROE経営の実践におけるKPI設定とその運用に関する研究者―実務家間ギャップを明らかにしたうえで,組織としての業績管理会計の整合性の在り方の多様性に関する検討を行った。 2.工程別損益計算の導入:工程別損益計算の導入プロジェクトに参加し,その構築プロセスを観察するとともに,大局的な視点から介入を行うことで,より論点を明確にした形での導入を促した。 3.情報システムの有意味化:情報システムの設計におけるKPI設定の実務上の困難性と,そのKPIの事後合理的な活用について検討を行った。 一方で,研究方法論については,定性的管理会計研究の意義・必要性とそこでの「理論」の位置づけについて整理したうえで,状況に埋め込まれた「常識的知識」に着目して管理会計実践を理解することで,これまでの管理会計の科学的知識では明らかにされてこなかった,もしくは誤っているとされてきた管理会計の役割やありように光をあて,それをきっかけとした管理会計の新たな理論構築が可能となることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り,前年度の一次的な知見に基づき,徹底的な調査の実施,および次年度における管理会計制度導入の準備を進めることができた。 その中で,学会報告とともに,研究方法論については,論文という形で検討を成果としてまとめるに至った。また,各テーマについても,一次的な理論化を基礎として,引き続きアクションリサーチを進め,日本企業のマネジメントコントロール会計に関するより頑健な理解を深めるに至っている。 しかし,ある企業におけるアクションリサーチを極めて重点的に行うことができる状況にあるため,一般化を目指したアンケートについては実施せず,定性的研究の徹底と,企業内アンケートの実施による理論化の検証をおこなうこととし,そのアンケートの一部を実施することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は,最終年度として,これまでの成果を基礎として,調査先でのアクションの継続とともに,海外の研究会などで研究報告を行う。 調査先でのアクションとしては,工程別損益計算の運用段階での関与,海外子会社の管理制度の構築,情報システムの有意味化を中心とし,これまでの成果や,研究報告におけるフィードバックとあわせ,より洗練された理論の構築を目指すとともに,その理論を基礎とした企業内アンケートを実施する。
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Research Products
(4 results)