2018 Fiscal Year Research-status Report
欧州版IAS/IFRSの規制力と分権型エンフォースメントに関する研究
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15K03809
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Research Institution | Kyushu Institute of Information Sciences |
Principal Investigator |
木下 勝一 九州情報大学, 経営情報学部, 教授 (40018643)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 欧州IAS命令 / 分権型エンフォースメント / 決算報告エンフォーメントパネル / 連邦金融監督機構 / 公認会計士会議 / 会計監査人監視機構会 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度の研究は、ドイツのIFRSのエンフォースメントメカニズムに関する欧州加盟各国における分権型のシステムについて、二系統の仕組みを取り上げた。すなわち、第一に、ドイツの資本市場指向企業の決算報告に対する「DPR-BaFin](決算報告エンフォースメントパネルー連邦金融監督機構)による決算報告のIFRS基準順守に関する重点監視の実態把握とその違反行為の抑制効果に関する研究であった。第二に、資本市場指向企業の決算監査に関する会計監査人の監査業務に関する「WPK-APAS](公認会計士会議ー会計監査人監視機構)による監査人業務に対する監視の仕組みとそのガバナンスに関する実態把握の研究であった。このドイツの二系統のエンフォースメントシステムに関して、本研究は、私的自治と行政による二重の監視機能によって、ドイツの資本市場指向企業のIFRS基準の実効性を担保する制度装置として構築され、実行されていることを法による制度化と理論による論拠づけによってドイツのIFRS基準の実効性を支えているとした。とくに、平成30年度の研究では、ドイツのエンフォースメントメカニズムのもとで、その実効性について、エージェンシー理論にもとづいたエンフォースメントのIFRS基準の規範違反行為の対する抑止効果が経営者の行動にいかに機能的に作用するかを研究した。そのうえで、エンフォースメントに関する先行研究の成果を整理し、実効性の限界の論究を行った。この研究のなかで、エンフォースメントの実効性を担保する根本的な要素が、経営者、監査役、会計監査人の法令遵守の厳格性と行動規範違反行為に対するサンクションの可罰性に行き着くことを確認することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成30年度の研究は、本科研費の研究課題研究の最終年度であったため、当初の実施計画では、ドイツのIFRS基準の実施を制度的に保証する装置としての公私協働の二系統の制度の実態把握を行い、その理論の特徴と役割を総括的にまとめたうえで、欧州版IFRSの規制の加盟国の分権型システムの意義を「公私協働会計規制論」として結論づける予定であった。しかし、九州情報大学から新潟食料農業大学への移籍が決まったため、研究図書の整理・移転の準備、また九州情報大学大学院用の研究図書の寄贈の整理の準備のために多大は時間を要するとともに、大学院における税理士試験免除希望の博士前期課程の修士論文指導にも多大な時間が、後期に集中してしまったため、研究計画が遅延する事態となった。このため、科研費事業期間の延長を申請した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度最終年度の研究機関について、補助事業の延長を許可され、平成31年度に本研究課題について一応終了することになるが、本テーマは、ドイツ会計制度研究の公私協働=公的セクターと私的セクターのハイブリッドシステムのもとで、会計・監査規制が行われていることを「国際会計基準のエンフォースメント」の仕組みのなかで解明することを企図したものである。今後は、この研究成果を『ドイツ会計規制論ー公私協働規制システム研究』(仮題)として、科研費の研究成果刊行図書として出版すべく、補助申請を行う予定である。この『ドイツ会計規制論』では、1985年の「会計指令法」としてのドイツ商法全面改正以降にはじまるグローバル化のなかでの商法会計規制の35年間の会計規制システムの研究を総括的にまとめることを想定している。
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Causes of Carryover |
平成30年度が補助事業の最終年度であったが、他大学への移籍が急に決まったこと、また、大学院博士前期課程の院生の修士論文の指導に多大の時間が要したことによって、さらに、研究室の図書整理にも時間がかかったことなど、当初の研究計画のなかで予定していた本研究課題の遂行ができなくなった。このため、他大学図書館、国会図書館および情報収集のための旅費の執行ができなかった。この結果、平成30年度の最終年度について、1年間の補助事業期間の延長を申請し、平成31年度に研究を終えることが承認された。この結果、平成31年度の予算執行のなかで、引き続き、研究課題関連の図書の購入を予定するとともに、旅費の執行のほか、関係資料の複写を予定している。移籍後の新潟食料農業大学が新潟市に所在するため、東京を中心とした大学図書館、研究機関の資料室、国会図書館への出張を使用計画に織り込んで予算執行していく予定である。
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