2015 Fiscal Year Research-status Report
ベイズ統計学的枠組みによる理解社会学と意味システム論の再構築
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15K03813
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐藤 俊樹 東京大学, 総合文化研究科, 教授 (10221285)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 意味システム / ベイズ統計学 / 因果分析 / 比較社会学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は三つある。 (1)現在につながる社会学の形成において数理・計量的な手法が果たした役割を明らかにすることで、ウェーバーやデュルケムの方法論の概念群を再定義し、その論理構造を解明する。(2)(1)をふまえ、ベイズ統計学の枠組みをもちいて、ウェーバーの理解社会学とルーマンの意味システム論の論理を再構成することで、量的アプローチと質的アプローチの両方に有効につかえる理論的フォーマットを整備する。(3)(1)(2)をふまえ、特に比較分析における因果分析の手法を体系化し、比較社会学や比較政治学の最新の成果や、統計的因果推測などの新たな手法を社会学にも取りこめるようにする。 具体的な課題としては、(a)ベイズ統計学の枠組みを使うことで、ウェーバーの理解社会学とルーマンの意味システム論という、意味的な事象をあつかう社会学の二大手法を、同じ平面で定式化できるようにする(⇒目的(1)(2))。さらに、それによって、(b)二つの手法がどうちがうのかも明確にできるとともに、ベイズ統計学の枠組みにはおさまりきらない部分、いわば意味をあつかう社会学の視座のどこに独自性があるのかも明らかにする(⇒目的(2))。また、(c)量的アプローチの代表とされる統計学的な枠組みが質的アプローチにもうまく適用できることが明確になれば、質的アプローチと量的アプローチをいたずらに対立させることなく、比較を通じた因果分析手法として体系化する(⇒目的(3))。それによって、同じ比較社会学でありながら共変法という独自の因果判定手続きを導入したデュルケムの社会学の特徴も描き出せる(⇒目的(1))。 さらに、(a)~(c)によってベイズ統計学の基礎的な理解を深めることで、(d)計量分析への本格的な応用の準備も進める。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要で述べた(a)~(d)の4つの具体的なうち、本年度は従来の蓄積をふまえて、特に(a)に注力した。その成果の一部は業績リストにあるようにすでに公刊されており、また、いくつかの論考は原稿を完成して、近刊予定の状態にある。 それらのなかでは、(b)にも着手しており、こちらも順調に進んでいる。 さらに、(c)に関しては、当初は予定外であったが、世論調査の方法論的および知識社会学的な分析の執筆を依頼されたものが、本年度中に公刊できた。この点では、予定外に順調に研究が進んでいる。これは(d)の作業の一部にもなるものである。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28 年度には(a)をほぼ完成させるとともに、(b)の主要部分をつくっていく。(b)の作業、特に関連する文献の捜索・入手・読解で一番労力がかかり、また困難も多いと考えら れる。したがって、本年度中でほぼ目途をつけた(a)をふまえて、次年度には(b)の課題に集中できる体制を整える。 それゆえ、応募者自身のエフォート率を高めるだけでなく、前年度で訓練や指導をおこなった研究協力者を全面的に活用して、作業全体の効率化を進める。ただし、その際には、協力者自身の研究業績としてもすぐれた成果が出てくるように、十分に配慮し、論文投稿なども積極的に支援していく。 (c)は主に最終年度の課題とするが、着手できる部分は早めに進めておく。関連した研究が国内・国外ともに増えつつあるので、その吸収と批判的検討につとめるとともに、早めに成果を公表することで、独自性を確保したい。
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Research Products
(3 results)