2017 Fiscal Year Annual Research Report
The Early Modern English Formation of the Term "Society": A Text-Mining Analysis
Project/Area Number |
15K03817
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
左古 輝人 首都大学東京, 人文科学研究科, 教授 (90453034)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | フェロシップ / カンパニ / モラル / ヴァーチュ / プロパティ / 支配 / 社会学 |
Outline of Annual Research Achievements |
16・17世紀英国の政治的言論におけるsocietyの概念の生成と指示対象の変化の過程をテキストマイニングにより解明した。当時のテキスト群から作成した26万行以上にわたる巨大コーパスの分析により、主に以下の諸点を明らかにした。 まず近世英語にとってsocietyは大陸の新古典主義に特有の新奇な外来語であり、そのままでは理解不能だったため、土着語fellowshipおよびcompanyと同定された。 第2に、societyは近世をとおして、人間の都市的な諸結合の総称として機能した。 第3に、societyの指示対象には時期により特色があった。16世紀前半では、もっぱら男性と女性のあいだの移ろいやすい関係がsocietyと呼ばれた。16世紀半ば以降は宗教団体や自警団、商家など持続性・組織性を有する団体、17世紀前半には何らかの自治権を王認された法人団体がもっぱらsocietyと呼ばれた。17世紀後半、societyは公的支配との関係を深めてゆき、それと反比例してvirtueとの関係を薄めていった。17世紀末には、propertyの保護がpolitical societyの唯一の存在理由として浮上した。 その後、現代にいたるまでsocietyの指示対象は自由あるいはvirtueを共にする諸関係と、民主あるいはmoralを共にする諸関係のあいだを揺れ動きながら歴史を刻んできた。目下、新自由主義の名の下に、貨幣的利益の多寡にまで純化されたvirtueが顕揚されているが、それがいつまで続くか、過去に照らして予断を許さない。 A.GiddensやI.Wallersteinなど現代の主導的な社会科学者のなかにはsocietyの術語としての意義を強く否定するものが少なくない。しかしこれらの事実はsocietyが、人間の生存状況の巨大な構造的変化の過程をモニターするのに適した、弾性に富む語句であったこと、そして今でもそうあり続けていることを示唆している。
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