2016 Fiscal Year Research-status Report
ガバナンスのリスク社会論・監査社会論的研究――資本主義と民主主義の現代的変容
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15K03820
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Research Institution | Otsuma Women's University |
Principal Investigator |
正村 俊之 大妻女子大学, 社会情報学部, 教授 (00209420)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
加藤 眞義 福島大学, 行政政策学類, 教授 (60261559)
小松 丈晃 東北大学, 文学研究科, 准教授 (90302067)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | コーポレート・ガバナンス / リスク管理 / 監査 / アカウンタビリティ / リスク・ガバナンス / 統治原理 / 情報化 / 貨幣 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、ガバナンスとリスクに着目して、1980代以降における情報化、グローバル化、新自由主義的な改革のもとで進行している現代社会の構造変容を理論的かつ実証的に解明することを目的としている。 すでに初年度において、現代社会のさまざまな社会領域でコーポレート・ガバナンスに類似するガバナンス構造が形成されていることを明らかにした。コーポレート・ガバナンスは、株主と経営者の間に、1.「本人/代理人」、2.「問責(監査)と答責(アカウンタビリティ)」、3.「権力手段としての貨幣」という3つの要素から成り立っているが、一連のガバナンス改革をつうじて、このようなガバナンス構造が非経済領域にまで浸透していることを示した。 そして昨年度は、現代社会では、監査概念だけでなく、リスク概念も拡張されることによって、リスクが組織や社会の統治原理にまで高められてきたことを示した。会計上の概念であった監査概念が、今では「VFM監査」「環境監査」「医療監査」など多様な意味を持つように、リスク概念も、地震、戦争、テロといった特殊な出来事に内在するのではなく、組織や社会の活動全般に内在する問題として捉えられるようになった。その結果、ガバナンスとリスクの間に緊密な関係が生まれてきている。リスク・ガバナンスとしてリスクの管理に力が注がれるとともに、ガバナンス全般がリスクの問題として把握されてきている。このような変化は、企業組織で最も進んでいるとはいえ、企業組織以外の組織でも進行しており、そのことが、機能分化した近代社会の変容に繋がっていることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
すでに昨年度は、昨年度に計画していた内容以上の研究を行ったので、今年度の予定を実行しつつ、これまでの研究成果をまとめる作業を行った。具体的には、外部メンバー二人(中央大学の高橋徹氏と千葉商科大学の荒川稔彦氏)を加えるかたちで、勁草書房から『ガバナンスとリスクの社会理論』(仮題)を出版するための作業を行った。現在、全員の原稿がそろいつつある段階である。また、代表者である正村は、単著として『民主主義の危機――自己組織化のゆくえ』(仮題、400字×412枚)を脱稿し、年度内に刊行する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、ガバナンスとリスクに関する理論的かつ実証的な研究をとおして、現代社会のなかで進行している資本主義と民主主義の変化を解明することを目的としている。資本主義と民主主義は、近代社会のなかで機能分化した経済システムと政治システムを表しているが、その二つのシステムがどのように変化しているのかを解明することが最終的な目的となる。
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Causes of Carryover |
15万円ほどの次年度使用額が生じたが、それは、研究会の開催が流会となり、出張費の支出が少なかったことと図書の購入数が少なかったためである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
出張旅費の補填および図書の購入にあてる。
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Research Products
(5 results)