2015 Fiscal Year Research-status Report
戦時朝鮮人強制動員の資源動員論的分析―日本の近代化過程における統治性をめぐって―
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15K03828
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Research Institution | Nagasaki Wesleyan University |
Principal Investigator |
亘 明志 長崎ウエスレヤン大学, 現代社会学部, 教授 (60158681)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 動員 / 統治性 / 総力戦 / 資源動員論 / アジア太平洋戦争 / 植民地 / 近代化 / 戦後補償 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、日本の近代化過程を、動員(労働動員及び軍事動員)という観点から捉えなおし、戦争や植民地といった負の側面と経済発展や人権といった望ましいとされる側面とを、「統治性(M.フーコー)」の一貫した論理のもとに把握するという全体構想の中に位置づけられる。そのため、本研究では、第二次世界大戦(アジア太平洋戦争)期の、植民地朝鮮からの労働動員に焦点を当て、日本において犠牲になった朝鮮人の遺骨をめぐる諸問題を中心に、歴史社会学的方法及び聞き取り調査等によってその人的・物的資源動員を総合的に把握する。また、日本の近代化過程における統治合理性を解明するための「動員理論」を構築する。具体的な研究過程としては、一方で戦争遂行としての強制動員の実態解明を行うとともに、それがいかなる動員計画のもとに実施されたかを検討し、計画と実態の齟齬を解明する。動員の分析については資源動員論モデルを適用する。 平成27年度の研究実績は以下の通りである。 ①植民地動員の実態解明については、社会学的研究はほとんど存在しないため、歴史学などの新しい研究成果を参照し、社会学的関心からそれらの新しい研究の解読作業を行った。そうした新たな研究の社会学的解読作業と並行して、実態解明のための聞き取り調査および史跡の現地調査を行った(筑豊、大牟田、広島、宇部、名古屋、東京、神奈川など)。 ②動員計画については、1)「(植民地動員を含む)国家総動員計画」はどのように策定されたか、2)「総力戦体制」下での動員組織(機構)の形成とその整備、運営はどのようになされたか、3)動員法の体系化とその施行を通して動員はどのようになされたか、といった点を明らかにするために、行政資料等を探索したり、各地に残された資料を収集するよう努めた。 ③これらの研究作業と並行して「動員モデル」構築と資源動員論的分析の可能性について、方法論的検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
以下の理由により、植民地動員の実態解明については、予定通り進行しなかったものの、動員計画に関する資料収集、「動員モデル」の構築についてはある程度順調に進行したといえる。しかしながら、所属機関の事情により、研究時間の十分な確保が困難な状況であったので、資料の分析については予定よりはやや遅れている。 ①植民地動員については、歴史学を中心とした日本、韓国、アメリカ等の新たな研究成果を渉猟した。しかし、被動員労働者の生存者はきわめて少なくなっているので、直接本人から聞き取りを行うことは困難となっている。遺族等を通して、間接的に背景を聞き取るという作業が中心になりつつある。 ②動員計画については、行政資料を中心に、国立国会図書館や公文書館などでの資料探索や新しい研究成果の調査を行った。また、現地調査の際、得られる資料も可能な限り収集した。 ③「動員モデル」構築に関しては、近代化過程における「統治性(M.フーコー)」を合理性の観点から評価するにあたって、社会学における「資源動員論」を用いることによって、有効な理論モデルを構築できるとの見通しのもとに作業を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究推進方策として、①植民地動員の実態解明、②総力戦と動員計画、③近代化モデルとしての「動員モデル」の構築の3点について述べる。 ①植民地動員の実態解明について、被動員労働者本人から直接聞き取りを行うことは困難な状況になっている。そこで、1)韓国の行政組織や民間の戦後補償運動団体、日本において遺骨返還運動を行っている民間運動団体や被動員労働者の名簿を収集している団体などと連携をとりつつ実態解明につながる資料を収集する、2)企業資料や行政資料、特高警察資料などに基づいて行われている歴史学などの先行研究を参照しつつ、必要があれば、原資料にあたる、などの方法により実態解明を行う。その過程で、被動員労働者本人や遺族などからの聞き取りが可能であれば、できるだけその機会を生かす。 ②総力戦と動員計画については、行政資料、法律資料を中心に、整理分析を行う。第一次世界大戦直後から「総力戦」の研究が始まっていたことから、戦時総動員体制以降だけではなく、植民地動員を含めた総動員の必要性の認識がどのようにして生じたのかを時代を遡って健闘したい。 ③近代化モデルとしての「動員モデル」については、動員(=労働力の移動)が近代化の過程でどのような意味を持っていたのかを解明するとともに、動員、とりわけ植民地からの動員が合理的かつ効果的あったかを、「動員計画」と実態を照らし合わせつつ、「資源動員論」などにより検証する。
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Causes of Carryover |
所属研究機関の事情(学部長職務の遂行)のため、十分な研究時間が確保することができず、研究会・学会参加、聞き取り、資料収集調査などの予定した作業が十分できなかったため。その結果、旅費、謝金等の支出が交付決定額を下回った。モバイルパソコンほか物品費については十分賄うことができた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度は所属研究機関が変わり、研究時間の確保がある程度可能な見通しが得られるようになったため、平成27年度に予定していてできなかった聞き取り調査や資料収集調査を平成28年度の研究計画に組み入れる。また、可能な限り、関連学会、研究会に参加し新たな研究成果を参照するよう努めたい。
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Research Products
(1 results)