2016 Fiscal Year Research-status Report
東日本大震災被災地における地域ケア・システム構築の社会学的研究
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15K03830
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
永井 彰 東北大学, 文学研究科, 教授 (90207960)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 地域ケア / 地域社会再編 / 地域生活支援 / 地域福祉 / 地域自治 / 被災者支援 / コミュニティソーシャルワーカー / 東日本大震災 |
Outline of Annual Research Achievements |
東日本大震災被災地における現地調査および資料収集によって、以下のことが明らかになった。 東日本大震災被災地においては、仮設住宅団地における地域生活支援と、介護保険法改正による新たな総合事業との関連づけが課題になったが、それぞれの市町村において関連づけが進んだところとそうでないところに分かれた。 東松島市においては、この関連づけが進展した。東松島市は、被災者サポートセンターを設置し、総合的な生活相談や見守りといった業務を社会福祉協議会に委託した。市内3か所に地域サポートセンターを設置し、管理者1名、生活支援相談員1名、訪問支援員8名および生活支援員1名を配置し、仮設住宅団地居住者の見守り活動を実施した。さらに2015年度からは、コミュニティソーシャルワーカー3名を各日常生活圏域に対応させる形で導入し、地域住民相互の支えあいを支えることに取り組んだ。2016年度からは、災害公営住宅への入居や集団移転地での住居建設が進み、仮設住宅の居住者が減少したことから、被災地サポートセンターの体制を変え、地域住民相互の支えあいを促進することに力点を移行させた。またコミュニティソーシャルワーカーを1名増員した。そのさいコミュニティソーシャルワーカー配置の財源も復興予算であり、恒久的なものではないが、他方、住民相互の支えあいを支援するという業務は必要であり続けることから、市の福祉課と社会福祉協議会では、この財源を介護保険の生活支援コーディネーターの費用から捻出する方向で検討している。このように関連付けが進展した要因としては、東松島市においては行政と社協のあいだの連携が震災以前から密接であったこと、また東松島市発足当初から協働のまちづくりに取り組んできており、住民自治の基盤があったことなどがあげられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
東日本大震災被災地については、これまで、宮古市、洋野町、釜石市、大船渡市、陸前高田市、石巻市、東松島市、仙台市、白石市、いわき市において現地調査および資料収集を実施し、東日本大震災被災地における地域ケア・システム構築の現状について知見を深めることができた。また阪神・淡路大震災被災地、中越地震被災地および熊本地震被災地についても資料収集を実施し、被災地における地域ケア・システム構築の状況について知見を深めることができた。そのうえで、今年度は、東松島市を集中的に調査研究し、地域ケア・システム構築の現状と課題を分析し、論文として公表した。
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Strategy for Future Research Activity |
東日本大震災被災地においては、いまだに仮設住宅が残る場所もあり、地域ケア・システム構築は進行中であるので、東日本大震災被災地についての資料収集および現地調査を継続し、地域ケア・システム構築の現状についての理解をさらに深める。また東日本大震災被災地における地域ケア・システム構築分析の参考にするために、東北以外の被災地(阪神・淡路大震災、中越地震、熊本地震の被災地)について資料収集するとともに、日本各地における特徴ある地域ケアや地域福祉の取り組みについても資料収集する。またいくつかの地点(東松島、石巻、仙台、陸前高田など)においては、より詳しく現地調査を実施する。
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Research Products
(1 results)