2018 Fiscal Year Annual Research Report
Construction of Local Governance over Science-Technology Policy in the Post-Great Earthquake Society and Gender
Project/Area Number |
15K03832
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
渋谷 敦司 茨城大学, 人文社会科学部, 教授 (90216028)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 原子力 / 住民意識 / ジェンダー / ローカルガバナンス / 住民投票 / 科学・技術政策 / 住民運動 / 地方自治 |
Outline of Annual Research Achievements |
われわれのこれまでの研究で、地域住民の考え、意識は震災と福島第一原発事故を境にして大きく変化したこと、中でも女性たちの意識が男性以上に大きく変化し、脱原発市民運動でも女性たちのグループが先導的役割を果たしていることが明らかになった。今回、2018年11月に原子力規制委員会が東海第二原発の20年間運転延長を認可したこと、東海第二原発の再稼働に関する「地元」自治体の「事前了解」に関する問題が喫緊の政治的争点となったことを踏まえて、2018年12月9日に行われた茨城県議会議員選挙に合わせて、「地域社会と原子力に関するアンケート2018」をわれわれは企画した。この調査では、自治体側が「事前了解」に関する意思決定をするにあたって、住民意思をどのように確認し、その意思決定過程に反映させるか問われる状況で、地域住民自身が東海第二原発をはじめとした原子力施設と今後どのように向き合っていこうとしているのか、住民意思の確認の手段、住民意思の反映手段としてどのようなことを求めているのか、を明らかにすることを目指した。その結果、自治体の「事前了解」の意思決定にあたって、回答者の6割以上が「住民投票」、「県民投票」などの直接的意思表示機会が必要だと考えていること、そのような住民意識の背景には、震災後に原子力の専門家をはじめとした科学・技術の専門家に対する信頼が大きく低下したこと、国レベルの原子力政策が専門家中心で国民不在であるという認識が大きく拡大したこと、そしてこのような原子力をめぐる専門家不信、専門家中心主義に対する批判意識を裏付けるような体験を地域社会で住民自身が震災後に重ねてくるなかで、東海第二原発再稼働問題を中心とした科学・技術政策に対する意思表明機会を求める機運が高まってきたことが、明らかになってきた。そして、このような機運醸成の中心に女性市民の活動があることも、重要な事実である。
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