2016 Fiscal Year Research-status Report
生産者と消費者の認識論的切断の克服のための多角的研究--主に労働と地域の視点から
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15K03833
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
五十嵐 泰正 筑波大学, 人文社会系, 准教授 (80451673)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 生産者/消費者関係 / 消費社会論 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度から継続している文献調査を中心とした消費者運動史・有機農業史の研究や、日本の消費社会の特質を明らかにする理論研究を継続したほかに、今年度は特に下記の点に力を入れた。
【1】 柏駅周辺を一次商圏とする柏市・我孫子市の消費者を対象とした800人規模の計量調査を、インターネット委託により行った。その結果、1)生産者との顔の見える関係など、いわゆる「社会的消費」「エシカル消費」を志向する層はごく限られていること、2)地元での消費を促す要因として、可処分所得などのほかに友人数やSNSでの発信志向などが大きな意味を持っていること、3)ただし、地元での消費志向は個人店志向には必ずしも結びつかないこと、等が明らかになった。 【2】 いまだ深刻な一次産品の買い控え傾向や価格低迷の続く福島県においては、昨年度に引き続き、いわき市の市民海洋調査「うみラボ」など、消費者と一次産業従事者のコミュニケーションの場における参与観察調査を進めた。一方で、福島県立医科大学のリスクコミュニケーション評価専門委員会委員に就任し、福島県内のリスクコミュニケーションをめぐる計量調査の設計と分析に携わりながら、リスク評価に関わる工学・心理学・医学などの幅広い専門家との意見交換を行った。 【3】 台湾における福島県・千葉県を含む5県産の農水産物の輸入停止措置解除をめぐり、来日した台湾の消費者団体・反核団体およびメディア関係者と活発な意見交換・情報共有を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
次年度(平成29年4~12月)に福島県立医科大学を受け入れ機関としたサバティカル休暇を取得し、その中で本研究に集中する予定となっていることもあり、本年度は、教育・管理業務および本研究以外の研究へ割くエフォートが大きなものとなったため。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、前述のとおりサバティカル休暇を取得し、福島県内でのフィールド調査を中心に、本研究を集中的に進める。特に、3年間関わり続けてきたいわき市の市民海洋調査「うみラボ」で採取した海水魚の放射能測定をサイエンスカフェ形式で行っている、アクアマリンふくしま水族館主催の「調べラボ」にて、いかなるコミュニケーション手法が来場者に対して有効だったかを問う計量調査を行う予定である。 一方で、昨年度の台湾からの視察団との意見交換・情報共有を発展させ、国内消費者の対照事例として台湾での聞き取り調査を行い、生産者と消費者との地理的・心理的な距離とリスク認知についての考察を深める。また、チェルノブイリ原発事故後にきわめて合理的な放射能汚染に関する基準値や検査体制を設定したノルウェーでの視察を、なぜそういった基準値の設定が日本ではできなかったのかを比較検討する目的で行うことも、検討中である。 また、研究の最終年度に当たる本年度は、国内外での研究の成果成果報告や、幅広く社会へのアウトリーチ活動にも注力して進めていきたい。
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Causes of Carryover |
次年度(平成29年4~12月)に福島県立医科大学を受け入れ機関としたサバティカル休暇を取得し、その中で本研究に集中する予定となっていることもあり、本年度は、教育・管理業務および本研究以外の研究へ割くエフォートが大きなものとなったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度は、福島県立医科大学を受け入れ機関として福島県での実地調査にあたるほか、台湾およびノルウェーでの調査を検討中であり、これまでの2年間よりも出張旅費がかなり多い支出となることが予定されている。
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