2015 Fiscal Year Research-status Report
死別による「生きづらさ」を抱える人びとに関する物語論的アプローチからの実践的研究
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15K03838
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Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
水津 嘉克 東京学芸大学, 教育学部, 准教授 (40313283)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 自死遺族 / 死別 / 生きづらさ |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、これまで積み重ねてきた自死遺族の方への調査を継続するとともに、これまでの調査データをもとに学会や研究会での発表、論文発表などを行った。 まず2015年9月5・6日に開催された家族社会学会・自由報告部会(1)において「自死遺児にとって『家族』とは」という題目で報告を行った。この報告は、自死遺児の方達に対する調査の過程で新たに生じてきた疑問、すなわち「(近代)家族」が自死遺児にとってどのようなものとして立ち現れるのか、そこにどのような学問的・実践的課題があるのかに関して議論を試みたものである。関連して、2016年4月24日に日本大学で行われたDFS研究会においても報告を行った。 また、法政大学の佐藤恵氏とともに社会学評論の公募特集に応募を試み、ほぼ一年間査読者とのやりとりなどを継続した結果、2016年3月の『社会学評論』66(4)に「生きづらさを生き埋めにする社会」として共著論文が掲載された。本論文は、辞意遺族と犯罪被害者遺族の生きづらさをデータをもとに検証するとともに、いま現在何故そのような「生きづらさ」があり続けているのかを考察したものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
概要に記したように、学会発表と公募論文においてこれまでの成果(あるいはそこから派生した新たな課題)を発表することが叶い、研究課題を公に訴えていく努力は実を結んだ一年であったと考える。 しかしその一方で、自死遺児の方達に対する調査はあまり進めることができず、実質的にはひとりの対象者にインタビュー調査を実施するにとどまってしまった。 当初掲げていた研究目標を達成していくために、今年は調査データをまとめると同時に、なんとか一人でも多くの方に話を聞かせて頂けるよう鋭意努力する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
先にも記したように、今年はインタビュー調査の実施とそのデータの取りまとめが第一の課題になってくると考える。 それと同時に、調査を実施していくなかで新たな課題として浮かび上がってきた“「(近代)家族」と死別(者)”の問題、“死別(者)を排除する社会”のあり方の問題に関して考察を進めていくために、理論的な考察も進めていく必要がある。 特に「家族」をめぐる議論に関してはこれまであまり理論的な側面に触れてこなかったので、テーマ的に関連する先行研究にも目を配り、注意深く考察を進めなければならない考える。
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Causes of Carryover |
先にも記したように、2015年度は諸理由により調査に出向くことができず、旅費などを適切に使用することができなかったため。 また、パソコンの購入を見送ったことも大きな理由のひとつである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度は、調査を再開する予定である。 また、ワークステーションと同等の処理能力を持つデスクトップパソコンも購入する。
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